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『おかあさんはね』

エイミー・クラウス・ローゼンタール 文
トム・リヒテンヘルド 絵
高橋久美子 訳
マイクロマガジン社

母の願い

十五才の息子に手紙を書いた。
反抗期真っただ中の息子に
手紙を書くなんて。
道徳の授業で、親からの手紙が子どもに渡されるとのこと。
先生が考えたサプライズだ。

あなたが生まれたとき。
初めておっぱいをあげたとき。
夜泣きが続いて不安だったとき。
おかあさんは、分からないことだらけで必死だったなあ。

いつの間にか私より背が高くなったね。
おかあさん、
この頃怒ってばかりだよね。
手紙なんて、うざったいと思ったかも。
授業当日、帰ってきた息子は
何も言わなかった。

『おかあさんはね』に描かれている、
いくつもの願い。
この絵本を十五才の息子に渡すのは
照れくさい。
でもね、あなたに伝えたいことは
この絵本と同じ。
赤ちゃんのときも、
高校生になった今も。
手紙を書く機会をくれた
先生に感謝しよう。

『おかあさんはね』を読むと、
私は胸がいっぱいになる。
不器用な私でも、うまくできなくても、大丈夫だと思える。
ああ私、おかあさんなんだ。

文 藤巻 吏絵(ふじまき りえ)
『唐棣(はねず)色の明日』で第十一回銀の雫文芸賞最優秀賞受賞。
同作品はNHKFMにてラジオドラマ化。

著書に、『美乃里の夏』、こどものとも『アルマジロくんとカメくん』ともに福音館書店、『ふみきりのかんたくん』教育画劇。
他に、紙芝居のお話や合唱曲の歌詞なども手掛ける。

おしまい。


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