ありのままがいちばん
ありのままの自分でいるって、
思いのほか難しい。
他人からどう思われているか
気になるし、
理想の自分に近づこうと
背伸びしてしまう。
そんな私の目の前に、
周りを全く気にしない男子がひとり。
息子には、自分だけの時間の流れが
あるようだ。
とことん、ゆっくり、
やりたいことをやり、
何時間も同じ姿勢でいる。
『ナマケモノだから』の
ナマケモノみたい。
木の枝にぶらさがっているナマケモノ。
自分が一番だと言い合う動物たちの
ことなど、おかまいなしだ。
ところが、そんな動物たちが一番だと
認めたのは、そう、なんとナマケモノ。
ナマケモノは誰かと比べようなんて
考えもしない。
一番になったことを気にもしない。
ありのままのよさを
見つけてくれるなんて、
周りの動物たちも素敵よね。
ついつい体裁ばかり
気にしてしまう母だけど、
実は私、相当な怠け者。
ナマケモノみたいに一日中寝ていたい。
誰か私のいいところ、
早く見つけてくれないかな。
文 藤巻 吏絵(ふじまき りえ)
『唐棣(はねず)色の明日』で第十一回銀の雫文芸賞最優秀賞受賞。
同作品はNHKFMにてラジオドラマ化。
著書に、『美乃里の夏』、こどものとも『アルマジロくんとカメくん』ともに福音館書店、『ふみきりのかんたくん』教育画劇。
他に、紙芝居のお話や合唱曲の歌詞なども手掛ける。
おしまい。