妊娠がわかったとき、「妊婦健診ってどれくらいの頻度で行くのだろう?」と疑問を感じる妊婦さんは多いでしょう。
妊婦健診は、妊婦さんと赤ちゃんの健康状態をチェックし、安全に出産を迎えるために欠かせません。
本記事では、八丁堀さとうクリニック副院長の佐藤杏月さん監修のもと、妊婦健診の目的や必要性から妊娠時期ごとの頻度や基本的な検査までをわかりやすく解説します。
この記事を読んで妊婦健診の全体像を把握し、安心してマタニティライフを送りましょう。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
八丁堀さとうクリニック副院長・産婦人科医:佐藤杏月さん
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。
3人の子どもの子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の夫とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
医療法人社団双葵会八丁堀さとうクリニック副院長、医学博士、日本産婦人科学会専門医。
妊婦健診の目的や必要性
妊婦健診の重要な目的は、妊婦さんとお腹の赤ちゃんの健康を守ることです。
妊娠中は、体内でさまざまな変化が起こり、予期せぬトラブルが発生することもあります。
例えば、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊婦さんに関わる病気、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離など赤ちゃんに危険が及ぶ状態を早期に発見し、適切な処置を行うことが大切です。
また、健診は妊婦さんが出産まで安心して過ごせるようにするための精神的なサポートの場であり、疑問や不安を解消する機会にもなります。
妊婦健診の頻度や回数
妊婦健診の頻度は厚生労働省が示す基準があり、妊娠の時期により異なります。
これは、妊娠週数が進むにつれて、妊婦さんと赤ちゃんの状態が変わったり、異常が発生するリスクが高まったりするためです。
厚生労働省の基準では、妊婦健診は少なくとも14回程度は受けることが推奨されています。
ただし、妊婦さんの体や心の状況、高血圧や多胎妊娠などのハイリスク妊娠の場合は、医師の判断で受診回数が増える可能性があります。
また、病院によって健診の頻度が多少異なる場合もあります。
妊娠判定・予定日決定(~10週頃)→2週間に1回
妊娠がわかってから10週頃までの妊婦健診は、2週間に1回の頻度で行われます。
主に妊娠の確定診断を行い、出産予定日を決定します。早期流産のリスクも高いため、体調の変化に注意して過ごしましょう。
11週頃〜23週頃→4週間に1回
11週~23週頃の妊婦健診は、基本的には4週間に1回の頻度です。
この時期はつわりが治まり、体調が安定してくることが多いです。
24週頃〜35週頃→2週間に1回
24週~35週頃の妊婦健診の頻度は、2週間に1回です。
妊婦さんや赤ちゃんの状態が変化しやすいため、これまでよりも受診する頻度が増えます。
お腹の張りやむくみなど、マイナートラブルが増える時期でもあり、細やかなチェックが必要です。
36週以降→1週間に1回
妊娠後期、特に36週以降はいつ陣痛が始まってもおかしくない時期です。
赤ちゃんの心拍や妊婦さんの血圧など、状態の急な変化が見られる可能性もあるため、毎週1回の健診となります。
また、出産に備えて入院準備を進めていきましょう。
予定日以降→1週間に2回
出産予定日を過ぎても陣痛が来ない場合は、赤ちゃんへの影響が懸念されるため、健診の頻度は1週間に2回に増えます。
胎盤の機能低下や羊水量減少などのリスクがあるため、慎重にチェックが行われます。
妊婦健診で毎回行う基本検査
妊婦健診では妊娠時期に関わらず、妊婦さんと赤ちゃんの状態を把握するために、以下の6つの基本的な検査が毎回実施されます。
体重測定
妊娠中の体重増加は、適正範囲にコントロールすることが重要です。
急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクを高めるからです。
反対に、増加量が少なすぎると、胎児発育不全のリスクもあります。
日本産婦人科学会「妊娠中の体重増加の目安について」では、妊娠前の体格が普通体重(18.5 ≦BMI<25kg/m²)であった場合の体重増加の目安は10~13kgです。
なお、BMIは「体重(kg) ÷ {身長(m)×身長(m)}」で求められます。妊娠前の体格が肥満である場合は、体重増加の許容量がより厳しくなります。
ただし、この体重はあくまでも目安です。医師の指示を守りましょう。
血圧測定
高血圧は、妊娠高血圧症候群を招きやすくなります。
この病気は、妊婦さんには脳出血や肺水腫(肺に水が溜まる)、肝機能障害などの重篤な合併症を起こすリスクがあります。
また、赤ちゃんの発育不全や機能不全を起こす可能性もあり、最悪の場合は胎児死亡に至るケースもあります。そのため、毎回血圧をチェックして、異常の早期発見に努めているのです。
尿検査
尿検査では、主に尿たんぱくと尿糖を調べます。
これらを調べることで、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気を発見できます。
子宮底長(エコーを実施した場合は省略可能)
子宮底長とは、恥骨の上から子宮の最も高い部分までの長さです。
この長さから子宮の大きさを推定し、赤ちゃんの推定体重や成長の目安にします。
ただし、最近では超音波検査でより正確な情報が得られるため、この検査は省略されることもあります。
胎児心拍の確認
超音波検査を行い、赤ちゃんの心臓が動いているか、心拍数は正常かをチェックします。
浮腫の評価
浮腫、つまりむくみの有無や程度をチェックして、身体の状態を評価します。
妊娠中の下肢のむくみは珍しくありませんが、顔や手指までむくんでいるときは注意が必要です。
妊娠高血圧症候群のサインの一つでもあるため、尿蛋白や血圧とあわせて評価します。
【時期別】必要に応じて行われる主な検査
基本検査に加えて、妊娠の時期や必要性に応じてより専門的な検査が実施されます。
これらは、異常を早期に発見し、適切な対応をとるために重要です。
【妊娠初期】
血液検査で貧血の有無や血糖値、肝機能のほかに、風しんウイルスの抗体やB型肝炎の抗体などもチェックします。
また、妊娠前に受けていない場合は子宮頸がん検診も行います。超音波検査では、正確な妊娠週数の確定や多胎の有無を確認します。
【妊娠中期】
妊娠中期に行う検査は血液検査、超音波検査、B群溶血性レンサ球菌検査です。
血液検査では貧血や血糖値をチェックします。超音波検査では、発育状況や羊水の量、胎盤の位置などを確認します。
B群溶血性レンサ球菌は、人間の体内に存在している常在菌の一つです。
発症率は低いとされていますが、経膣分娩の際に産道で感染してしまうと死亡や後遺症につながるリスクがあるため、陽性の場合には分娩時に抗生剤の投与を行います。
【妊娠後期】
妊娠後期には、初期と中期と同様に血液検査や超音波検査を行います。
分娩の準備やリスク管理がさらに重要になる時期のため、妊婦さんと赤ちゃん、双方の体調を細かくチェックしつつ、必要に応じて医師が指導します。
里帰り出産の場合、妊婦健診は?
里帰り出産をする場合でも、妊婦健診は妊娠初期からきちんと受ける必要があります。
多くの場合、妊娠が判明してからしばらくは、自宅近くの病院で妊婦健診を受けることになるでしょう。
里帰り出産を希望する場合、妊娠20週頃までをめどに出産する病院を決め、分娩予約をすることが大切です。病院によっては、20週頃までの初診が必須となっている場合もあります。
また、里帰り先の病院を受診するには、現在通っている病院の紹介状が必要です。
赤ちゃんの発育状況や里帰り先の病院の受け入れ体制などによって異なりますが、一般的には妊娠32~34週までに転院するよう指示されるケースが多いでしょう。その後の妊婦健診は、里帰り先の病院で受けることになります。
妊婦健診を受け、安心して出産に臨みましょう!
妊婦健診は、妊婦さんと赤ちゃんの命と健康を守るために欠かせません。妊娠初期から出産まで、医師の指示にしたがって適切な頻度で受診しましょう。
不安や疑問があれば、健診の際に遠慮なく担当医に相談してみてください。定期的な健診を通じて、自分の体と赤ちゃんの状態をしっかりと把握し、安心して出産に臨みましょう。
文:西川正太
