
第二子・第三子の誕生は嬉しいものですが、同時に忘れてはならないのが上の子の心のケア。「きょうだい育児は上のお子さんを優先に」と言われた経験のあるママやパパもいるのではないでしょうか。
この記事では、プロフェッショナル心理カウンセラーの浮世満理子さん監修のもと、上の子のストレスサインについて原因、現れるサイン、対処法などについて紹介します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
メンタルトレーナー/プロフェッショナル心理カウンセラー・アイディア高等学院学院長 浮世満理子さん

トップアスリートから経営者まで幅広い分野のメンタルトレーニング、カウンセリングを行うかたわら、心のケアの専門家の育成を目指し、アイディアヒューマンサポートアカデミーを設立。
また、子どもの可能性を引き出し、生きる力を育てる、アイディアメンタルトレーニング個別塾、アイディア高等学院も開設。著書、講演、マスコミ出演など多数。
上の子のストレスの原因には何がある?
子どものストレスにはさまざまなものがありますが、「上の子」であることによって生じるストレスにはどのようなものがあるのでしょうか。
両親や家族を下の子に取られたと感じている
下の子が生まれる前までは自分に向いていたママやパパ、おじいちゃんおばあちゃんの関心が下の子に向くことで、ママやパパ、おじいちゃんおばあちゃんを下の子に取られたと感じる子もいます。そこから不安や嫉妬が生まれ、ストレスとなります。
上の子自身もまだ幼い場合、自分の気持ちをうまく言葉にできず、さらに大きなストレスとなることも。
「お兄ちゃん・お姉ちゃん」として叱られることが増えた
年相応にできるはずのことができなかったり、わざとふざけたりしていると感じると、ママやパパは「お兄ちゃん・お姉ちゃんなのに」と思ってしまいがちです。しかし、「何かをしたい」「何かをしてほしい」という気持ちには上の子も下の子も関係ありません。
小学校入学などの環境の変化
幼稚園・保育園入園や小学校入学などで環境が変わると、スムーズに馴染むことができずストレスを感じることがあります。中には進級でクラスメイトが変わったり担任の先生が変わったりすることでストレスを感じる子どももいます。
そこへ下の子の誕生が重なると、環境の変化が大きくストレスを感じやすくなります。また、ママやパパも新しい環境に慣れておらず、上の子のストレスに気づきづらくなってしまうことも。下の子の誕生以外にも環境が変わる場合には、より気をつけて上の子の様子を見てあげるとよいでしょう。
家庭環境の悪化
家庭は子どもの一番の居場所です。両親の夫婦仲が悪い、喧嘩ばかりしているなど、家庭環境が悪化すると、子どもは安心して過ごすことができずストレスを感じます。
下の子が生まれてしばらくは、生活のリズムがつかめなかったり、睡眠不足で疲れが溜まったりしてママ自身、パパ自身もイライラしてしまうことがあります。うまくストレスを解消し、家庭環境を整えられるようにしましょう。
上の子のストレスサインにはどのようなものがある?
上の子がストレスを感じる原因にはさまざまなものがあることがわかりました。はっきり「ストレスを感じている」と言わなくても、子どもの言動からストレスサインを感じ取ることができます。
ここでは、ストレスサインの代表的なものをご紹介します。
ちょっとしたことで泣く、怒るなど感情的になりやすい
通常だったら気にならないようなちょっとしたことで泣いたり怒ったりと、普段よりも感情的になっているようであれば、ストレスを疑いましょう。
自分でできていたことをやらなくなる、赤ちゃん返りをする
たとえば、今まで自分で食べていた食事を食べさせてもらいたがる、着替えを手伝ってもらいたがるなど、それまで自分でできていたことをしなくなることがあります。
また、頻繁に抱っこをしてもらいたがったり、指しゃぶりをしたりと赤ちゃん返りをすることもあります。場合によっては、それまではなかった夜泣きが始まるケースもあります。
これらは「自分にもっと注目してほしい、構ってほしい」というサインだと考えられます。
体調不良を起こしやすくなる
お腹を壊しやすくなったり、頻繁に頭痛を起こしたり、発熱したりといった症状が続いたら、ストレスを疑いましょう。風邪を引きやすくなることもあります。
ストレスが溜まることで疲れやすくなっていることが原因として考えられます。
寝つきが悪くなったり、途中で起きることが増える
寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることが増えるのも、ストレスサインのひとつです。それまではなかった夜泣きが始まることもあります。
自律神経には身体を活発に働かせようとする交感神経、休息モードに入らせる副交感神経のふたつがあり、日中は交感神経が、夜は副交感神経が優位に働くことでバランスを保っています。しかし、ストレスを感じると夜でも交感神経が優位のままになってしまい、うまく寝つけなかったり、眠りが浅くなってしまったりします。
食欲が低下する
食欲が低下するのもストレスサインのひとつです。自律神経が乱れると摂食中枢がうまく働かなくなり、食欲が低下したり、味を感じづらくなったりします。
ストレスサインが出たときの対処法
上の子にストレスサインが見られたら、どのように対処すればよいのでしょうか。
上の子との時間を作る
下の子が生まれたことで、上の子と過ごす時間が減っていませんか。パパやおじいちゃんおばあちゃんなどに協力してもらい、ママが上の子だけと過ごす時間を意識的に作ることで、「自分も下の子と同じように大事にされている」と実感できます。
身近な人に協力してもらうのが難しい場合には、一時保育などを利用するのも一案です。また、下の子がお昼寝をしている間に上の子と一緒におやつを食べたり、膝に乗せてお話をしたりするのもよいでしょう。
抱っこなどのスキンシップの時間を大切にする
上の子と抱っこやハグなど、スキンシップを意識的に取るようにしましょう。スキンシップを取ると、オキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシンは愛情ホルモンとも呼ばれ、ストレス耐性を強くします。
このオキシトシンは抱っこやハグをする子ども・大人双方に分泌され、大人の方のストレス解消にもつながります。
短い時間でも効果はあることがわかっています。忙しくて対応できないときでも、家事の合間などの時間を見つけて、こまめに抱っこやハグをしてスキンシップを取りましょう。
たくさん褒める
子どもは褒められることで、「自分が認められた」「受け止められた」と感じます。自己肯定感が高まるだけでなく、両親や家族は自分のことを見てくれているという安心感にもつながります。
お手伝いをしてくれた、何かができるようになったなどの結果を褒めることはもちろん、うまくいかなかったときでも「頑張ったね」「〇〇しようと思ってくれたんだね」と経過を褒めましょう。
上の子への愛情を行動だけでなく、言葉でも示すことが大切です。
ストレスサインが出たときのNG行動は?
上の子がストレスを感じるような状況では、ママやパパも忙しかったり疲れていたりしてストレスを感じていることが多いもの。しかし、次のような対応は状況をさらに悪化させてしまいます。
放置する
上の子のストレスサインに気づいたとき「忙しいから」「対処する時間がないから」と放置することは絶対にやめましょう。
放置されると子どもは「ママやパパは自分に関心がないんだ」「自分は愛されていないんだ」と感じ、ますます暴力的になったり体調を崩したりしてしまいます。また、自己肯定感の低下にもつながり、後々の発達にも悪影響を与えるおそれがあります。
よその子どもやきょうだいと比較をする
よその子どもやきょうだいと比較するのもやめましょう。子どもは一人ひとり発達段階も違えば、個性も異なるもの。わかっていても、ついできる子と比較してしまいがちです。
しかし、比較することで子どもの自尊心を傷つけ劣等感を抱かせたり、不公平感や競争心をあおることになりかねません。
子どものストレスサインを見逃さないように
上の子がストレスを感じているなと思ったら、いつも以上にゆったりと上の子との時間を大切に過ごすことを心がけましょう。幼い子どもにとってはママやパパ、おじいちゃんおばあちゃんが自分を見てくれている、自分は愛されていると感じられる環境にあることが何よりのストレス解消です。
環境の変化、下の子のお世話などでママやパパもストレスや疲労を感じているでしょうが、上の子の様子は意識的によく見るようにしましょう。ストレスサインに早めに気づきケアすることができ、結果として家族みんなが快適に過ごせるようになります。
文:サカイケイコ