
成長の過程で、さまざまな表情を見せてくれる赤ちゃん。にこっと笑ったり、口をへの字にして泣きそうになったり。なかでもちょこんと舌をのぞかせるしぐさは、愛らしさがあってほっこりしますよね。
しかし、あまり頻繁に見られると「発達などに問題ないかな?」と、ママやパパも不安になるかもしれません。
この記事では、桜堤あみの歯科院長の網野重人さん監修のもと、赤ちゃんが舌を出す理由やその影響などを説明します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
桜堤あみの歯科院長・小児歯科専門医:網野重人さん

1995年、昭和大学歯学部卒業 同窓会賞受賞。昭和大学小児歯科学教室勤務。
1999年、昭和大学大学院卒業 歯学博士取得、昭和大学小児歯科学教室助手(現小児成育歯科学教室助教)。
2002年、昭和大学歯学部 兼任講師、世田谷区の一般歯科医院の院長就任(医療法人 理事)。
2008年に桜堤あみの歯科を開院し現在に至る。
日本歯科専門医機構認定 小児歯科専門医。
赤ちゃんが舌を出すのはいつ頃から?
赤ちゃんは生後1か月頃から舌を動かせるようになり、口周りの筋肉などの発達が進んでいきます。ただ、この時期はまだ自分で意識した動作ではないケースがほとんどです。
生後3〜4か月頃になると舌を出すしぐさは多く見られるようになり、生後6か月頃までには自分の意思で動かせるようになります。
赤ちゃんが舌を出す生理的な理由
舌が出る動作は、新生児から見受けられる正常かつ自然な体の反応です。
月齢や発達段階、赤ちゃんの状況などによって、その行動が起きる理由は変わります。ここでは生理的な理由で考えられるものをピックアップして紹介します。
口周りの筋肉が未発達
新生児〜3か月頃までは、口の周りの筋肉が十分に発達していません。特に生まれてすぐは口をうまく動かしたり閉じたりするのが難しく、自然と舌が出てしまうことがあります。
月齢が進むにつれて、徐々に自分の意思で口周りを動かせるようになります。
おなかが空いている
離乳食の時期に入るとママやパパの食事の様子をじっと見て、だ液があふれ出ることもあります。赤ちゃんが口をモグモグと動かし、舌を出すときはおなかが空いたサインかもしれません。
また、離乳食を始めたばかりの頃は、食べ物をベーっと口の外へ押し出そうとする原始反射「舌突出反射」も見られます。
歯の生え始め(歯ぐずり)
生後6〜9か月頃になると乳歯が生え始め、歯茎がむずがゆく感じやすい時期です。そのため、手を口に持っていったり、生えてくる乳歯をなめたり、舌を出したりすることも多いでしょう。
また、乳歯の生え方によっては、口内が切れたり腫れたりするケースもあります。歯茎の痛みや腫れなどの不快な状態が長く続くと「歯ぐずり」といって、ぐずって泣いて不機嫌になる場合も。赤ちゃんの歯や口内が気になるときは、小児歯科の先生に相談してみましょう。
口内をケガしている
赤ちゃんは好奇心が旺盛で、物の感触や味などを口で確かめようとします。いろいろなものを口に入れやすいので、気付かないうちに口内をケガしていることもあるかもしれません。
口周りを気にして機嫌が悪いといったときは、口の中に傷や出血などがないかを確認してみましょう。
生理的な理由以外で考えられる理由
舌を出す動作は、生理的な理由だけで起きるわけではありません。ここでは、ほかに考えられる理由をいくつか紹介します。
舌の存在に気付いて遊んでいる
赤ちゃんは、発達とともに舌の存在に気付いて遊んでいるときがあります。動かす感覚を楽しんだり、にこにことほほえみながら舌を出して「嬉しい」「楽しい」という感情を見せたりする場合もあるでしょう。
ただ、舌を動かして遊んでいるうちに口周りによだれが出ることも多く、そのままにしておくと肌がかぶれやすいため、こまめに拭いてあげるとよいですよ。
げっぷがうまく出せない
赤ちゃんは飲んだり食べたりした際にうまく飲み込めずに、胃の中に空気がたまりやすい傾向にあります。ふだんより舌を出したり引っ込めたりしているときは、げっぷが出せずに不快に感じているケースもあります。
そのようなときは、縦抱きの状態で背中を下から上へやさしくトントンとたたいてあげるとよいでしょう。
それでもげっぷが出ずにいったん寝かせる場合は、体の右側を下にするか、上半身を高くしてしばらく様子を見ます。げっぷが出ないと吐き戻しをしやすいので、ママやパパが近くで見守ってくださいね。
赤ちゃんが舌を出すことで身体に与える影響
理由がわかっても、あまり頻繁だと身体に影響が出ないかママやパパは気になるかもしれません。
ここでは、可能性として舌を出すことでどのような影響があるか解説します。基本的には問題のない場合が多いので神経質になる必要はありませんが、念のため頭に入れておきましょう。
歯並びに与える影響
舌が正しい位置にないと将来的に歯並びやかみ合わせ、呼吸の仕方などに影響する可能性があります。
舌は口を閉じた状態のときに、舌全体が上あごにくっついている状態が理想の位置です。
舌を前に出すことが習慣になってしてしまうと、上下の歯に隙間ができる「開咬(かいこう)」や「出っ歯」になりやすく、歯並びが乱れると虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また、舌の位置が低い状態だと、下の歯が前に押されてあごの発達に影響が出てしまうことも。
歯並びをきれいに保つことは、虫歯や歯周病などを予防するためにとても大切です。かかりつけの歯科医院を見つけて、定期的に歯科健診を受けると安心です。
ウイルスなどの感染リスク
だ液は口内環境を整え、細菌の増殖を抑えてくれる重要な役割があります。口を開けたままの状態だと口内が乾燥して自浄作用や抗菌作用が弱まり、ウイルスや細菌などの感染症や虫歯などにかかりやすくなります。
また、手やおもちゃなどなめて、感染リスクを高めてしまう可能性もあります。
赤ちゃんが舌を出すのを治したほうがいい?
舌を出すのは成長過程で起きるため、過度に心配しなくても大丈夫です。
ただし、場合によっては、歯並びやかみ合わせなどに影響することをママやパパも知っておきましょう。
いつもと違う様子や回数が増えたなど気になる点があるなら、ためらわずに小児歯科や医療機関を受診したり、子育ての専門家などに相談したりすることをおすすめします。
赤ちゃんが舌を出すのは、発達の一環です!
舌を出すのは成長過程で起きるため、過度に心配しなくても大丈夫です。
ただし、場合によっては、歯並びやかみ合わせなどに影響することをママやパパも知っておきましょう。
いつもと違う様子や回数が増えたなど気になる点があるなら、ためらわずに小児歯科や医療機関を受診したり、子育ての専門家などに相談したりすることをおすすめします。
文:misono