おむつを交換して授乳もしたのに、なぜか赤ちゃんが泣き止まない。
赤ちゃんには「魔の3週目」と呼ばれる泣きのピークが訪れることがあります。
泣き止まない原因が分からず、打つ手がなく悩んだりストレスを感じたりするママやパパもいるのではないでしょうか。
今回は、けいこ豊洲こどもクリニック院長の塚田佳子さん監修のもと、魔の3週目が起こる要因や寝かしつけのコツなどを詳しく紹介します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん
小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
生後3週目の赤ちゃんが泣き止まない「魔の3週目」
まずは、赤ちゃんの泣きのピークがいつごろ訪れるのかについて解説します。
泣きのピークが来る時期は個人差がある
さまざまな研究によって、赤ちゃんは親のかかわり方にかかわらず、よく泣く時期があることが明らかにされています。
ただし、これはすべての赤ちゃんに当てはまるわけではなく、泣きのピークが来る時期には個人差があります。
赤ちゃんが泣き止まなかったり、夜中に何度も目を覚ましたりすると、親としては不安を感じたり戸惑ったりするかもしれません。
特にこの時期は、産後の身体で育児をして疲れがたまるときでもあるため、体力的にも精神的にもつらさを感じやすくなります。
生後1~2か月の間にピークが訪れる子が多い
「魔の3週目」と呼ばれる泣きのピークは、3週目ころに必ず訪れるわけでなく、生後1〜2か月の間に訪れることが多いです。
泣きのピークが来る時期は赤ちゃんそれぞれで異なりますが、ピークを迎えたあとは少しずつ泣く時間が減って落ち着いていくでしょう。
ママやパパも泣き止まないからと言って自分を責めなくて大丈夫です。
「魔の3週目」はなぜ起こる?
なぜ「魔の3週目」が起こるのか、はっきりとした原因は明らかではありません。ここでは、その要因として考えられることを挙げていきます。
①眠たいのに眠れない
生後3週目ごろの赤ちゃんは、外界の刺激に敏感になり、眠りにつくのが難しくなります。
また、大人と比べて赤ちゃんの睡眠サイクルは非常に短く、深い眠りに入る前に外部の音や光、身体の不快感などに反応して目を覚ますことがあります。
②体内時計がズレている
生後3週目ごろの赤ちゃんは、まだ昼夜の区別がついておらず、体内時計も未発達な状態です。
そのため、昼夜逆転の状態になりやすく、夜中に長時間泣いたり、昼間にぐっすり寝たりすることがあります。
この体内時計のズレが赤ちゃんの機嫌に影響を与え、泣き止まない状況が生まれやすくなります。
③お腹が空いている
お腹が空いていることも泣き続ける原因のひとつです。
この時期の赤ちゃんは急速に成長するため、これまでの授乳・ミルクの間隔では満足できなくなっていきます。
また、授乳中の姿勢や飲み方が原因で十分に飲めていないケースもあります。
④ゲップがうまく出せない
生後3週目ごろの赤ちゃんは、授乳中に空気を飲み込んでしまうことがあります。
ゲップがうまく出せず、空気がたまることがぐずりの原因となることがあります。
肩に赤ちゃんの頭を乗せて、背中を優しく叩いてさすってあげることで、ゲップを促せます。
⑤便秘
「魔の3週目」に赤ちゃんが泣き止まないのは、便秘が原因かもしれません。
赤ちゃんの消化器官はまだ発達の途中であり、排便のリズムが安定していなかったりいきむ力が弱かったりするため、便秘になりやすいのです。
便が出ないことが赤ちゃんの不快感につながり、泣き続ける原因となります。
⑥お腹の外に出たことへの不安
生後3週目ごろの赤ちゃんは感覚が少しずつ発達し、外部の刺激に敏感になっていく一方で、まだ十分に外の世界に慣れていません。
そのため、ママのお腹の中と違う環境に戸惑いや不安を感じて今まで以上に泣きやすくなります。
「魔の3週目」寝かしつけのコツ
赤ちゃんが泣いたときにはまず、お腹が空いていないか、おむつが汚れていないか、ゲップがでなくて苦しくないかなど基本の確認をしましょう。それでも泣き続けたら、寝かしつけのコツを試してみてくださいね。
おくるみで包む
赤ちゃんは、おくるみに包まれるとママのお腹の中にいたときと同じような安心感を得られる場合もあります。
おくるみに包んで話しかけたり、音楽をかけたりして赤ちゃんが落ち着く環境を作りましょう。
おしゃぶりを吸わせる
吸啜反射(きゅうてつはんしゃ:原始反射の一つであり口に入ってきたものを吸う反射)を活かしておしゃぶりを与えると、赤ちゃんが安心して泣き止んだり、眠りにつきやすくなったりします。
おしゃぶりを吸ってリラックスしやすくなることで、赤ちゃんが泣き止むこともあるでしょう。
ホワイトノイズを聴かせる
ホワイトノイズとは、さまざまな周波数の音が同じ強さで含まれるノイズの一種です。たとえば、テレビの砂嵐や換気扇の音などがあります。
生後3週目ごろの赤ちゃんは、静かな環境が逆に不安を引き起こすことがあります。ホワイトノイズを聞かせると、ママのお腹の中と似ている環境になるため赤ちゃんが安心して眠れるかもしれません。
ただし、ホワイトノイズの音量が大きすぎないか気を付け、赤ちゃんの様子を見ながら注意して活用しましょう。
横向きの状態で抱っこする
横向きで抱っこすることで、赤ちゃんの不快感を和らげリラックスしやすくなります。
横抱きは、赤ちゃんがママの胎内にいたころの丸まった体勢に似ているため、安心感を与えやすいと言われています。横抱きは寝かしつけの際にもおすすめです。
横向きで抱っこする際には、赤ちゃんの頭と首をしっかりと支え、無理のない姿勢を保つことが大切です。
「魔の3週目」の乗り越え方
ここでは「魔の3週目」の乗り越え方を具体的に紹介します。
①抱え込まない
「魔の3週目」の時期は、赤ちゃんの泣きが激しく、対応に苦慮するママやパパが多いです。
孤独を感じているとストレスが増し、さらに育児がつらく感じられるかもしれません。「自分だけがうまく対処できていない」と感じるかもしれませんが、多くのママやパパも同じ状況です。
この時期は一時的なものであり、自然に落ち着くことがほとんどのため、ひとりで抱え込まないことが大切です。
②家族に頼る
赤ちゃんの泣きが激しいと育児への負担感も出やすくなるでしょう。家族に頼って負担を減らし、少しでも育児が楽になるように工夫しましょう。
たとえば、夜間の授乳やおむつ替えをパートナーと交代で行えば、短い睡眠時間を長くできます。
また、両親や義両親、きょうだいに短時間でも赤ちゃんを見てもらえれば、休息の時間がとれるでしょう。
③ファミリーサポートを利用する
ファミリーサポートとは、子どもの送迎や預かりなど子育ての「支援を受けたい人」と「支援したい人」が会員となって地域で子育ての援助活動を行う仕組みです。
具体的には、ママやパパが買い物に出かけたいとき、ランチや美容院に出かけたいとき、病気になったときなどに幅広く利用できます。会員登録をして援助を頼みたい日時と内容をセンターに申し込むことでファミリーサポートを活用でき、育児の負担を和らげられるでしょう。
④自治体の保健所、保健センターに相談する
「魔の3週目」を乗り越えるためには、周囲にサポートを求めることが大切です。この時期のママはホルモンバランスが崩れて産後うつになる人もいます。
自治体の保健所、保健センターでは、子育ての不安や悩みを保健師に相談できる窓口などがあります。電話での相談を受け付けている自治体も多いので、つらいときは連絡してみてください。
⑤ほかの赤ちゃんと比べない
ほかの赤ちゃんと比べることで、自分の赤ちゃんの成長に不安や焦りを感じることがあります。
赤ちゃんの成長や発達は個々によって異なり、泣き方にも個人差があります。ほかの赤ちゃんがすぐに泣き止んで、自分の赤ちゃんが長く泣くこともあるでしょう。
赤ちゃん一人ひとりのペースを尊重して育児を楽しむことが、よりよい育児環境を作る鍵となります。
あまり焦らずに、赤ちゃんと向き合っていきましょう!
「魔の3週目」は、赤ちゃんの泣きが激しくなる時期です。いつ訪れるかは個人差があり、生後3週目に訪れるとは限りません。一般に、生後1~2か月の間に訪れることが多いとされています。
赤ちゃんが泣く理由には、眠たさやお腹の空き具合、ゲップの不足などがありますが、これらの要因を一つひとつ解決していき、それでも泣き止まないときは、そのような時期と割り切って、ひとりで抱え込まず周囲にサポートを求めることが大事です。
困ったときは遠慮なく小児科医の力を借りてください。 私たちはママやパパの味方になって解決策を考え、全力でサポートするためのプロです。 疲れたら休みながら、周りに頼ってみんなで育児をしていけるとよいですね。
文:西川正太