赤ちゃんが日常的に使う哺乳瓶。赤ちゃんのお口に入るものなのでなんとなく清潔にしたほうがよいとわかっていても、いつまで消毒が必要なのか、どのくらい衛生面に配慮すべきなのか気になりますよね。今回は、哺乳瓶の消毒が必要な理由と清潔に保つための方法などを解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん
自治体や企業等と連携した産前産後ケア事業担当を歴任後、妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための講座運営や相談事業に従事している。
哺乳瓶の消毒や除菌が必要な理由
使用済みの哺乳瓶はきちんと洗わないと、残っていたミルクなどを栄養とする細菌が急速に増えて感染症や食中毒を引き起こす可能性があります。
乳児(1歳未満)に感染が起こる原因として特に注意が必要なのは、サカザキ菌とサルモネラ菌です。サカザキ菌に感染すると敗血症や壊死性腸炎、重篤な場合は髄膜炎を発症することがあります。サルモネラ菌に感染すると、下痢や発熱など食中毒を起こすことがあります。サカザキ菌は粉ミルクを製造する段階で、サルモネラ菌はミルクや搾乳を哺乳瓶に準備する段階で混入することがあります。完全に無菌の状態を保つことは難しいことから、赤ちゃんの体内へ入り込む細菌の数を少しでも減らすため、使用後の哺乳瓶をしっかりと洗い消毒や除菌をする必要があります。
ちなみに、消毒や除菌という言葉は、細菌やウイルスなどの感染力を失わせたり、数を減らすことを意味します。専門用語で「消毒」は医薬品や医薬部外品、「除菌」は日用雑貨品に使う言葉ですが、この記事では哺乳瓶を清潔に保つ方法として一般的によく使われる「消毒」を用いて説明していきます。
哺乳瓶の消毒はいつまで必要?
感染症や食中毒を予防する基本は、授乳の前やおむつを交換した後などに手洗いをすること、粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かすこと、使用済みの哺乳瓶をしっかり洗って乾燥させることです。消毒だけでは予防できないため、哺乳瓶の消毒が必要な時期について明確な決まりはありません。
生後3か月頃までは消毒すると安心です
細菌などの病原体から身体を守るしくみとなる免疫には、病原体の体内への侵入や増殖を防ぐ機能などがあります。
赤ちゃんは、胎内でママからもらった免疫が生後6か月頃までに急激に減っていくのと同時に、生後3か月頃からは自力で免疫を作り始めます。
免疫機能の低い生後3か月頃までは、手洗いなどの基本の感染対策を続けたうえで、哺乳瓶を1日1回消毒すれば、病原体の数をぐっと減らすことができて安心です。生後3か月以降でも早く生まれた赤ちゃんや小さく生まれた赤ちゃん、病気のある赤ちゃんは免疫機能が低いことがあるので、その場合はかかりつけの医療機関のスタッフへ確認しましょう。
哺乳瓶を清潔に保つためのポイント
哺乳瓶を清潔に保つためには、汚れをしっかりと洗い流す「洗浄」、付着する細菌などの病原体の数を減らす「消毒」、病原体を繁殖させないための「乾燥」の3つが大切です。哺乳瓶の取扱説明書などを確認して製品に合った方法を選びましょう。
哺乳瓶を洗浄する方法
食器洗い機・乾燥機(食洗機)を使う場合
- 哺乳瓶を各部品(ボトル本体、乳首、キャップ、通気弁など)に分けて、水 or お湯ですすぎます。
- 食洗機に入れて洗浄します。小さい部品はフィルターにひっかからないように、専用のかごへ入れましょう。乾燥や除菌の機能を使うとより細菌を減らすことができます。
- 洗浄が終わったら、石鹸と水でよく洗った手で各部品を取り出します。
手洗いの場合
- 石鹸と水でよく手を洗います。
- 哺乳瓶を各部品(ボトル本体、乳首、キャップ、通気弁など)に分けて水 or お湯ですすぎます。雑菌の付着を防ぐため直接シンクに置かないで、哺乳瓶を洗うために準備した清潔なたらいに入れましょう。
- 食器用洗剤と哺乳瓶を洗うために準備した、清潔なブラシを使って洗います。乳首の穴部分から水をしぼり、汚れが残らないようにしましょう。
- 再び、流水ですすぎます。
- 各部品を清潔なふきんやペーパータオルの上に置いて乾燥させた後、ほこりや汚れのない場所へ保管しましょう。ふきんに付着した雑菌が移るのを防ぐため拭いたりこすったりする必要はありません。
哺乳瓶を消毒・乾燥する方法
食器洗い機・乾燥機(食洗機)を使って洗った場合
食洗機を使って洗浄した場合、取り出した後の消毒は不要です。完全に乾いていない場合は、清潔なふきんやペーパータオルの上に置いて乾燥させた後、ほこりや汚れのない場所へ保管しましょう。次に使えるように組み立てておくと、清潔にした哺乳瓶の内側や乳首の内側と外側の汚染を防ぐことができます。
手洗いした場合
食器用洗剤で洗浄した後に消毒する場合、哺乳瓶とそのほかの部品を沸騰したお湯に入れて5分ほど煮沸する方法、専用の薬液に浸け置きする方法、専用の容器で水蒸気(スチーム)を発生させて除菌する方法の3つがあります。
煮沸や水蒸気(スチーム)で消毒した後に取り出す際は、やけどに注意しましょう。
浸け置きして消毒した場合、哺乳瓶に水滴が残っても薬液の成分(次亜塩素酸ナトリウム)は、ミルクや母乳のたんぱく質と反応してごく少量の塩化ナトリウム(塩)になり、乾燥すると蒸発するのですすがなくてOKです。においが気になる場合は水道水ですすぎましょう。
よくある疑問を解決!哺乳瓶の消毒と授乳で気を付けること
授乳を安全に続けるためには、哺乳瓶の消毒以外にも気を付けたほうがよいことがあります。ここではよくある疑問についてまとめて解説します。
電子レンジを使った消毒は推奨されていません
近頃は、電子レンジの誤った使い方による発火や破裂、やけどなどの事故が発生しているため、電子レンジを製造する各メーカーでは、食品の加熱や調理以外での使用を禁止していて、哺乳瓶などの消毒についても注意喚起しています。注意喚起を受けて、電子レンジを使った消毒の表示を「可」から「不可」に変更したメーカーもあります。WEB上では最新情報ではないまま電子レンジを使った消毒方法を紹介しているサイトをよく見かけるので注意が必要です。
洗浄に使ったブラシやたらいを清潔に保つには?
洗浄に使ったブラシやたらいなども、哺乳瓶と同じ方法で「洗浄」「消毒」「乾燥」をした後、清潔な場所へ保管しましょう。
搾乳器の洗浄と消毒は?
搾乳器も哺乳瓶と同じように、製品に合った方法で「洗浄」「消毒」「乾燥」をした後、清潔な場所へ保管しましょう。
粉ミルクの計量スプーンの消毒は必要?
粉ミルクの計量スプーンは、乾燥したままであれば毎回洗浄や消毒をしなくてよいです。床に落としたり、水滴がついたときは、哺乳瓶と同じようによく洗い乾燥させて、必要に応じて消毒しましょう。ちなみに、国内の各乳業会社では、使用後に容器内へ戻さないことを推奨しています。雑菌の付着が気になる場合は容器内へ戻さず、別に準備した清潔な容器へ保管しましょう。
液体ミルクを準備するときに注意すること
ミルク(粉タイプ or 固形タイプ)はサカザキ菌を死滅させるため70℃以上のお湯で溶かす必要がありますが、液体ミルクは滅菌されているため加熱する必要はありません。準備の段階でサルモネラ菌などの混入を防ぐため、必ず手洗いをしてから、赤ちゃんの口に含む部分に触れないように注意して、哺乳瓶へ移し替えたり、乳首を装着しましょう。
ミルクウォーマーは使ってもよい?
調乳したミルクは常温(25℃以下)より高い環境で保存したり、15分以上加温し続けると急激に細菌が増殖しやすくなります。ミルクの入った哺乳瓶を保温するための便利な育児用品として、ミルクウォーマー(別名 ボトルウォーマー、哺乳瓶ウォーマー)が市販されていますが、感染のリスクを上げるため使用はおすすめしません。ミルクは飲ませる直前に準備して、調乳(液体ミルクの場合は開封)をして2時間以上経過したら捨てましょう。
清潔を心がけて赤ちゃんの健康を守りましょう
生後2〜3か月頃からは指しゃぶりを始めたり、手に持ったものを舐めるようになるので、身の回りから完全に細菌をなくすことは難しくなっていきます。
赤ちゃんをお世話する前後のこまめな手洗いを習慣にして、哺乳瓶を使うときは、生後3か月頃までは「洗浄」「消毒」「乾燥」を、それ以降は「洗浄」「乾燥」を心がけて赤ちゃんの健康を守りましょう。
【参考文献】
CDC How to Clean, Sanitize, and Store Infant Feeding Items Frequently Asked Questions (2024年8月閲覧)
厚生労働省 乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン2007
一般社団法人日本電機工業会HP 家電製品・機器情報オーブンレンジ・電子レンジ安全/正しい使い方(2024年8月閲覧)