
赤ちゃんが初めて言葉を発するときは、ママやパパにとってかけがえのない喜びの瞬間です。
「いつから話せるようになるのかな?」と、言葉を心待ちにしている方も多いでしょう。その一方で、なかなか言葉が出てこないと不安を感じますよね。
この記事では、小児科医であるけいこ豊洲こどもクリニック院長の塚田佳子さん監修のもと、新生児から2歳頃までの発語の発達について解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん

小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
発語とは?
発語とは「言語を発すること」です。
生まれたばかりの赤ちゃんは泣くことで意思をあらわし、成長とともに意味のある言葉で伝えるようになっていきます。
赤ちゃんが周りの世界を認識し、コミュニケーションを取ろうとする成長の証とも言えます。
発語の発達段階
赤ちゃんの言葉の発達は泣くことから始まり、クーイングや喃語を経て、意味を持つ言葉に成長していきます。ここでは、月齢ごとの一般的な言葉の発達の段階について説明します。ただし、その過程には個人差があるため、あくまで目安としてください。子どものペースを見守っていくことが大切です。
新生児|泣く
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹が空いたときや眠たいとき、不快なときなどに泣いて気持ちをあらわします。
泣くことは、最初のコミュニケーション手段です。生まれたばかりの頃は、まだ言葉を話せません。
また、赤ちゃんの気持ちによって泣き方にも違いがあり、お腹が空いたときは大きな声で激しく泣いたり、眠たいときはぐずぐずと泣いたりなど、微妙な違いでママやパパにサインを送っています。
2か月頃~|クーイング
生後2か月頃では、「あー」や「うー」などといった喉の奥から出すような声(クーイング)を発します。赤ちゃん自身が自分の声に気づき、発声の練習をしている段階と言えます。
クーイングは、リラックスして心地よいときによく聞かれます。
5~6か月頃~|喃語
生後5~6か月頃では、クーイングに加えて「ままま」「ぶぶぶ」といった、意味を持たない音を繰り返すようになります。これを喃語と言います。
喃語は、色々な音を組み合わせて発声の練習をしている段階で、同じ音を繰り返すことが多いのが特徴です。
1歳頃~|一語文
1歳頃では、「ママ」「パパ」「ワンワン」「ブーブー」など意味を持つ言葉(一語文)を話す赤ちゃんが多くなります。
たとえば「まんま」と言ってお皿を指差して、「ご飯を食べたい」という意思を伝えてくれるのです。
こども家庭庁が発表した「令和5年乳幼児身体発育調査(調査結果の概要)」によると、「一語以上の言葉を話す」と回答した割合は生後10~11か月未満で10.4%、生後11〜12か月未満で21.3%です。生後1年6か月〜7か月未満では、91.1%が一語以上の言葉を話す、という結果でした。
これは喃語とは異なり、身近な家族や物を指して簡単な言葉で伝えようとしており、言葉の意味を理解しようとしていると言われています。
1歳半~2歳|二語文
1歳半から2歳半頃になると、二語文を話す赤ちゃんもいます。
二語文では簡単な文章で自分の意思を伝えられるため、表現力は大きく広がります。
たとえば「ブーブーきた」「パパだっこ」など、自分の気持ちや要求をママやパパに伝えられるようになるのです。単語数が増えるのもこの時期です。
言葉の発達が遅いときに考えられる原因は?
赤ちゃんの発達は個人差があると理解はしていても、周りの子どもと比べて「うちの子は発語が遅いのでは?」「言葉が遅れるのは何か病気があるの?」と不安に感じている方もいるでしょう。言葉の発達がゆっくりな場合、いくつかの原因が考えられます。
性格や個性
性格や個性によって、言葉の発達のペースは違います。
活発な場合に比べて、おとなしい性格の赤ちゃんは、言葉の数が少ない傾向です。
内気な性格の場合は、周りの様子をじっくり観察したうえで行動し始めることが多いため、他者に言葉で伝えるまでに時間がかかるのかもしれません。
言葉を発する機会
周りの大人からの話しかけが少なかったり、特に言葉にしなくても家族が気づいてくれたりすると、言葉を覚えるチャンスも減ってしまいます。
そのため、言葉に触れる機会が少ないと、言葉の発達が遅くなる恐れがあります。
聴力
生まれつき耳が聞こえにくい場合、言葉の発達に影響する可能性があります。
周りの音が聞こえにくいと、言葉を覚えにくいからです。周りの音に反応しなかったり、大きな音にも驚かなかったりするなどの様子が見られる場合は、聴力に問題があるかもしれません。
病院を受診する目安は?
喃語などを発する様子が見えない場合は、1歳を目安に小児科の受診を検討しましょう。
聴力に問題がある可能性もあるため、早めに専門家の診察を受けることが大切です。周りと比べて焦る必要はありませんが、1歳を過ぎてもまったく言葉が出ない場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
言葉の発達を促すポイントは?
赤ちゃんの言葉の発達を促すためには、周りの大人が積極的に関わることが必要です。とは言え、難しいことはありません。日常生活の中で簡単に取り入れられることで、言葉の発達をサポートできるでしょう。ここでは、具体的なポイントをいくつかご紹介します。
ポイント①たくさん話しかける
たくさん話しかけることで、赤ちゃんも言葉を覚え、コミュニケーションを取る楽しさを感じます。
しかし、何を話したらよいかわからない、というママやパパもいるかもしれません。
そんなときは、目の前にあるものについて話しかけたり、赤ちゃんの行動を言葉で表現したりするだけでいいでしょう。「赤いボールだね」「おもちゃで遊んでいるね」など簡単な言葉で問題ないので、話しかける回数を増やしていくことが重要です。
ポイント②興味や関心に寄り添う
興味を持っているものや、関心を示していることに合わせて話しかけましょう。
たとえば、おもちゃで遊んでいるときには「ブーブーだね」「赤色だね」など、具体的に声をかけるとモノと言語が結びつきやすくなります。
ポイント③絵本の読み聞かせをする
絵本の読み聞かせも効果的です。絵本を通して、たくさんの言葉や表現に触れられます。
絵本を選ぶ際は、カラフルな絵が描かれているものや、擬音語が多く使われているものを選ぶと、赤ちゃんの興味を引きつけやすいでしょう。
ポイント④言い間違えを指摘しない
赤ちゃんが言葉を言い間違えても、指摘しないでください。
間違いを指摘すると、言葉を発することに抵抗を感じてしまうかもしれません。間違った言葉を使っても、否定せずに正しい言葉で言い直すことが大事です。
訂正するのではなく、正しく言い直したり、優しく教えてあげたりすることで、赤ちゃんは自然と言葉を覚えていくでしょう。
ポイント⑤同世代の赤ちゃんと過ごす
同世代の赤ちゃんと触れ合うことも、言葉の発達によい影響を与えます。
言葉や遊びを通して、刺激を受けるからです。
児童館や地域のイベントなどに参加してみるのもよいでしょう。ほかの赤ちゃんと一緒に遊ぶことで言葉だけでなく、社会性や協調性も学べます。
焦らず子どもの言葉に耳を傾けよう!
言葉の発達には個人差があるため、周りと比べて焦る必要はありません。
ただし、1歳を目安に発語がない場合は聴力に問題がある可能性なども考えられるため、専門医の受診を検討してもよいでしょう。
大切なのは、赤ちゃんのペースに合わせて言葉に耳を傾け、温かく見守ることです。焦らずにその成長を褒め、喜びましょう。
文:西川正太