赤ちゃんのお世話で欠かせない抱っこ。
まだ首のすわっていない赤ちゃんを抱き上げるのは緊張しますよね。
今回は、基本の抱き方をご紹介。素手による抱っこが上手になると、抱っこ紐を使うときにも応用できますし、抱っこするママとパパの身体の負担も軽くなりますよ。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん
妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための相談事業を中心に活動中。
一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダーとして、自治体や企業、団体と連携した産前産後ケア事業等を担当。
同協会が開設した訪問看護ステーションco-co-ro(東京都渋谷区)で、産前産後や子育て中のママのこころのケアを中心とした訪問看護にも従事。
赤ちゃんの抱き方の基本は“自然な姿勢”を保つこと
赤ちゃんの自然な姿勢とは?
赤ちゃんの自然な姿勢は、腕がW字型、足がM字型に開いた状態です。
肘を曲げて手は顔の近くにあり、足は両膝と股関節が十分に曲がっています。
赤ちゃんの股関節はまれに脱臼することがあります。
股関節脱臼の発生や悪化を防ぐためにも、M 字型開脚の維持を基本に、自由に足を動かせる姿勢で抱っこすることがとても重要です。
基本の抱き方を知ろう! 赤ちゃんの抱き方は2種類
抱き方にはたて抱きと横抱きの2種類があり、どちらも首のすわっていない新生児からの抱っこに適しています。
▼たて抱き
▼横抱き
たて抱き
赤ちゃんを正面で抱く方法です。
M字型開脚で胸にしがみつく形になり、コアラが木につかまる様子に似ていることから「コアラ抱っこ」とも呼ばれます。
首のすわっていない赤ちゃんも、頭と首をきちんと支えれば自然な姿勢を保ちやすく、ママやパパにとっても負担の少ない抱き方です。
写真では手のひらを上にしておしりを支えていますが、長時間抱っこするときは手のひらの向きを固定せず、定期的に下向きや上向きに入れ替えると手首の負担を軽減できます。
たて抱きの抱き方
- 寝ている赤ちゃんの正面で向かい合います。
- 抱っこする人はやや前傾姿勢になり、両手で赤ちゃんの頭と首を少し持ち上げ、片方の手で頭と首を支え、もう一方の手でおしりを支え、胸元へ引き寄せるように抱き上げます。
- 頭と首を支える手の位置はそのままで、胸元に寄りかからせ、おしりを支えていた手をスライドさせ腕全体でおしりを支えます。
- 腕の上に赤ちゃんを座らせるようにのせるのがポイントです。
※ここをチェック
- 赤ちゃんの膝がおしりより上に位置し、股関節がM字に開脚している
- 赤ちゃんの腕がW字になってしがみついている
- 赤ちゃんの首がしっかり支えられ、背中はゆるやかなCカーブを描いている
- 赤ちゃんのおしりの位置がおへそと同じか、おへそより少し上の高さにある
- お互いに程よく密着している
- 赤ちゃんの口や鼻を塞いでいない
- 赤ちゃんの頭からお尻が一直線で、左右対称になっている
たて抱きの抱き下ろし方
- 頭と首を支える手の位置はそのままで胸元に寄りかからせ、おしりを支えていた腕をスライドさせ、手でおしりを支えます。
- 抱っこしたまま前傾姿勢となり、赤ちゃんのおしりを静かに下ろし、おしりを支えていた手を離したら頭に添え、両手で頭と首を支えながらそっと寝かせます。
横抱き
赤ちゃんをあやすときや寝かしつけるとき、移動時など日常的に用いられる抱き方です。
腕全体で輪を作り、包み込むように抱くことで、ママやパパにとっても疲れにくい姿勢を保てます。
抱き上げるとき、自分の体側にある赤ちゃんの膝や腕が伸びやすいので気をつけましょう。
横抱きの抱き方
◆パターン1 -------------------------
横から抱き上げる簡単な方法
- 寝ている赤ちゃんの真横にきます。
- 抱っこする人はやや前傾姿勢となり、赤ちゃんの頭を少し持ち上げ、頭を支える側の肘を首の下へさしこみ、頭と首の支えを安定させたら、もう一方の腕を膝下へ入れます。
- 優しくすくうように、抱っこする人側へ引き寄せて抱き上げ、腕全体で輪を作って赤ちゃんを支えます。
◆パターン2 -------------------------
正面から抱き上げる方法
- 寝ている赤ちゃんの正面で向かい合います。
- 抱っこする人はやや前傾姿勢となり、両手で赤ちゃんの頭と首を少し持ち上げ、片方の手で頭と首を支え、もう一方の手でおしりを支え、引き寄せるように抱き上げます。
- おしりを支える手を軸にして、頭と首を支えている手を、反対側の肘に近づけるようにクルっと回し、肘の内側に頭をのせます。
- 頭と首の支えを安定させたら、おしり側を支える腕を膝下へ入れ、腕全体で輪を作って赤ちゃんを支えます。
※ここをチェック
- 赤ちゃんの股関節がM字に開脚している
- 赤ちゃんの片側の足だけ伸びていない
- 赤ちゃんの頭と首が抱いている人の肘の内側にのり、お互いに程よく密着している
- 赤ちゃんの背中がゆるやかなCカーブを描いている
- 赤ちゃんの姿勢が左右対称になっている
横抱きの抱きおろし方
◆パターン1 -------------------------
横抱きのまま下ろす方法
- 抱っこしたまま前傾姿勢となり、赤ちゃんのおしりから静かに下ろします。
- 膝下を支えている腕をそっと抜き、手で頭と首を支えます。
- そのまま頭と首を少し持ち上げて、頭と首を支えていた腕を抜き、両手で頭と首を支えながらそっと寝かせます。
◆パターン2 -------------------------
横抱きからたて抱きへ変換して下ろす方法
- 頭側は肘の内側で首を支えたまま、手でおしりを支えます。
- おしり側を支えている腕を膝下から抜き、頭と首を支えます。
- おしりを支える手を軸にして、頭と首を支えている手を、赤ちゃんと向かい合うように正面へ動かします。
- 抱っこしたまま前傾姿勢となり、赤ちゃんのおしりから静かに下ろします。
- おしりを支えていた手を離したら頭に添え、両手で頭と首を支えながらそっと寝かせます。
基本の抱き上げ、抱き下ろしのポイント
抱き上げと抱き下ろしは、基本の動作と手の形は同じで手順が逆になるだけ。
抱き上げるときは、両手で頭と首を少し持ち上げてから、写真のように片方の手で頭と首を支え、もう一方の手でおしりを支え、胸元へ引き寄せるように抱き上げます。
抱き下ろすときは、おしりから下ろし、おしりを支えていた手を離したら頭に添えて、両手で頭と首を支えながらそっと寝かせます。
赤ちゃんの頭と首を片手で支えるときは、親指と揃えた4本の指と手のひら全体で包み込むように支えましょう。
この手の位置で引き寄せるように抱き上げると、そのまま、たて抱きにも横抱きにも抱き替え可能です。
ママとパパに負担がかからないようにするコツ
立ったまま、背中や膝を伸ばした状態で腰を曲げて抱き上げると、背中や腰を痛めやすいです。
また、正座や両膝をついたままの姿勢で、抱き上げてから立ち上がる動作も背中や腰への負担が大きいため、赤ちゃんを低い位置から抱き上げるときは、片膝をつき、できるだけ赤ちゃん側にママやパパの身体を近づけ、密着してから立ち上がりましょう。
長時間抱っこするときは、赤ちゃんのおしりがおへそより少し高い位置にくるよう意識すると、ママやパパの反り腰を防げます。
脇をしめて肘を体につけ、密着する面積を広くすると重さが分散されてラクに感じます。
手のひらや手首、腕の力だけで抱くと、肩こりや手指のしびれ、腱鞘炎の原因となるので注意しましょう。
こんな抱き方はNG!
首がすわっていない赤ちゃんを抱っこするときは、頭と首をしっかり支えることが特に大切。
赤ちゃんは頭が重く、首の筋肉が弱いため、揺さぶられたときに自分の力で頭を支えられません。
強く速く揺さぶられ、頭がい骨の内側に何度も脳が打ち付けられると、脳が損傷を受けることも。首がすわるまでは、丁寧に首を支えましょう。
◆NGな抱き方例
- 赤ちゃんの首がしっかり支えられていない
- お互いに密着していない
- 赤ちゃんの姿勢が左右非対称でねじれている
- 首が背中側へ反っている
- 抱っこする人の肘が体から離れ、手や手首だけで支えている
覚えておくと役立つ! 抱き替えの方法
抱っこが日常的になると、抱き替えるスキルも必要に。
ここでは、抱き替えの方法を紹介します。
たて抱きから横抱きへ抱き替える方法
- 頭を支えている手はそのままで、おしりを支えている側の腕をスライドさせ、手でおしりを支えます。
- おしりを支える手を軸にして、頭と首を支えている手を、おしりを支えている側の肘に近づけ、肘の内側へ頭をのせて支えます。
- 頭と首の支えを安定させたら、おしり側を支える腕を膝下へ入れ、腕全体で輪を作って赤ちゃんを支えます。
横抱きの左右抱き替えの方法
- 頭側の肘の内側で首を支えたまま、腕は背中に、手はおしりへ添えます。
- おしり側を支えていた腕を膝下から抜き、腕で体を支えるようにして手を頭に添えます。
- 頭側の手をおしりから頭へスライドして、手で頭と首を支えます。
- 体を支えている側の手を頭からおしりへスライドさせて、手でおしりを支えます。
- おしりを支える手を軸にして、頭と首を支えている手を、反対側の肘に近づけるようにクルっと回し、肘の内側に頭をのせます。
- 頭と首の支えを安定させたら、おしり側を支える腕を膝下へ入れ、腕全体で輪を作って赤ちゃんを支えます。
「抱き癖」に医学的根拠はなし! 心配しすぎないで
「抱っこばかりしていると抱き癖がつくのでは?」と思ったり、人から言われたりして不安に感じることもあるかもしれません。
しかし、抱き癖については医学的な根拠はないので気にしなくて大丈夫です。
抱っこは親子の信頼関係を育むのはもちろん、赤ちゃんの成長発達を促し、情緒の安定や人格の形成に大きな影響を及ぼすことが多くの研究により明らかになっています。
赤ちゃんが自分で動き回れるようになるまで、その欲求に応じる最も簡単な方法は抱っこですが、そのためには、お世話をするママとパパの身体と心の余裕が必要です。
素手の抱っこをマスターしたら、赤ちゃんの成長に合わせて、抱っこ紐やスリング、ベビーラップなども活用してくださいね。
基本を覚えてたくさん抱っこしよう
親子がお互いに心地よく抱っこを続けられることは、とても大切です。
赤ちゃんの抱っこに慣れるまで、ぎこちないのは当然のこと。
ママもパパも楽になる抱っこの基本を覚えて、たくさん抱っこしてくださいね。
産後のママをケアするアプリ「mamaniere」
産後は赤ちゃんが中心の生活となり、出産という一大イベントを終えたママは自分の体を労わる時間すら無くなってしまいます。
そんなついつい後回しにしてしまいがちなママの体が、今どんな状態なのかを分析し、赤ちゃんとの産後の生活をより豊かにするための情報を提案してくれる産後ケアアプリ「mamaniere(ママニエール)」について、詳しくお聞きしました。
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基本的には自然に止まるのを待つのが良いですが、抱っこの仕方にもポイントがあります。
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はじめての育児はワクワクするけれど不安もいっぱい。
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【参考文献】
・日本小児整形外科学会作成『先天性股関節脱臼予防パンフレット』 平成30年2月22日改正
・ウィメンズヘルス理学療法研究会編集『ウィメンズヘルス リハビリテーション』メジカルビュー社 2014
文・ななせ
写真:松村宇洋(抱き方の実演)