
赤ちゃんが、ママやパパの後をついて来たり、姿が見えないと不安そうに泣いて探し回ったりする後追い。一緒にいたい気持ちに応えてあげたいけれど、どうしても離れなければならない場面では困りますよね。今回は、赤ちゃんの後追いがいつから始まるのか、後追いが起こる時期の身体と心の発達と、それに対応するためのヒントを解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん

自治体や企業等と連携した産前産後ケア事業担当を歴任後、妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための講座運営や相談事業に従事している。
後追いはいつから始まる?
赤ちゃんは成長と共に、最も多くの時間を一緒に過ごす人物(多くの場合、ママやパパ)を特別な存在と認識し始めます。その人物の話しかけや行動に強い興味を持ち、その特別な存在が少しでも自分から離れると、不安を感じて後を追うようになります。これを後追いと呼び、成長の過程で見られるごく自然な反応です。
後追いは、寝返りやハイハイ、つかまり立ち、伝い歩きなどで自由な移動が可能になると始まります。どの動きを身につけた段階で始まるかについて個人差はありますが、生後6か月頃以降に始まることが多いです。記憶する力や単純な予測ができる力がつき始める1歳頃から2歳を迎える間に落ち着くことが多いですが、子どもによって程度や持続する期間は異なり、さらに長く続く場合もあります。
赤ちゃんはなぜ後追いをする?
赤ちゃんが後追いをする理由はいくつかあります。
安心感を得るため
赤ちゃんは、いつも一緒にいる特定の人物に強い愛着と親しみを抱きます。
特に、最も多くの時間を過ごすママやパパの後をついて回ることは、安心感や幸福感を得ることにつながります。
ちょうど分離不安や人見知りの時期と重なるため、ママやパパと離れたくない、ママやパパが実際に見えないと落ち着かないという不安の気持ちから、後追いが激しい赤ちゃんもいます。
好奇心が高まるため
後追いをする時期の赤ちゃんは、周囲の環境に興味を持ち、自分の意思で移動しながら探検をします。安心して探検を続けるために、ママやパパのそばから離れないように後を追うことがあります。
赤ちゃんは、他の人の行動の観察と真似を繰り返して学習します。大好きなママやパパの後をついて回ることで、見よう見まねを繰り返し、新しいことができるようになり、家族以外との交流を深めていきます。
後追いをする時期の身体と心の発達
寝返りやハイハイ、つかまり立ちといった動きができるようになると「移動する」ことで目の前の人や物に興味を持って近づく体験を繰り返します。視力が向上すると、空間の奥行きや遠近感を自分で判断し、さらに遠くにいる人や物にも近づこうとする意欲が芽生えます。移動するときには、その場の環境に合わせて、全身の使い方を変化させ、安定した動きを身につけていきます。また、ママやパパの言葉を真似して声を出したり、音を出そうとしたりすることもあります。コミュニケーションの土台となる「ちょうだい」「どうぞ」といった相互のやりとりを楽しむようになります。
この時期の発達は、自分の欲求を行動によって満たすことができる自立の基礎となり、自分の意思で物事を成し遂げようとする意欲にもつながっていきます。
後追いをする子としない子、何が違う?
赤ちゃんは、ママやパパが一時的に離れても必ず戻って来るといった体験を繰り返すことで、次第にそのパターンが理解できるようになります。このような単純な予測ができるようになり、実際に親の姿を目にすることがなくても安心感が持てるようになると、自然と後追いをしなくなります。
自ら動く経験が少ない赤ちゃんは、後追いをしないこともあります。
例えば、安全を最優先に考えるあまり、抱っこ紐やおんぶ紐を長時間使い続けてしまうと、赤ちゃんが興味を持つ人や物に自分から近づく機会や、ハイハイなどの動きを身につける機会を逃してしまうことがあります。便利な道具も使い方次第では、赤ちゃんの自由で自発的な動きを制限してしまうことがあることを覚えておきましょう。
後追いに対応するためのヒント
日常生活の中で、赤ちゃんを不安にさせないために、常にそばから離れないようにすることは不可能です。後追いをする気持ちを刺激しすぎないように、以下の対応を心がけましょう。
言葉で情報を伝える
普段の生活の中で、赤ちゃんと離れる場面では、赤ちゃんへ離れることを伝えてから離れるようにしましょう。例えば、トイレに行くときは、赤ちゃんが1人でも安全に過ごせる場所にいるかを確認して「トイレに行ってくるね。すぐ戻って来るから待っていてね」と前もって声を掛けます。トイレから戻ったら「待っていてくれてありがとう」と伝えましょう。このようなコミュニケーションを繰り返すことで、赤ちゃんは先を予測できるようになり、姿が見えなくても安心して待っていられるようになっていきます。
「いないいないばあ」を楽しむ
後追いができるようになることは、記憶力の発達を示しています。この時期は、定番の遊び「いないいないばあ」を楽しむことができます。ママやパパの顔が一瞬隠れてまた見えると、「消えちゃった」「やっぱり隠れてた」といった予測と発見に夢中になります。
遊びに慣れてきたら「いないいない」と「ばあ」の間隔を少しためたり速めたりすると、予測が外れる楽しさが増します。また、顔を両手で隠すだけでなく、おもちゃやぬいぐるみにタオルをかぶせて楽しむアレンジを加えてもよいでしょう。「いないいないばあ」を繰り返すことで、見えないものをイメージする感覚を育んでいきましょう。
赤ちゃんと程よく離れることを心がける
赤ちゃんと離れなければならない場面で、後追いや泣いて不安そうな様子が見られたら「一緒にいるから大丈夫だよ」と優しい気持ちで接しましょう。
「なんで待てないの」「ついてこないで」といった強い口調は、赤ちゃんの不安をさらに募らせることになります。もし、後追いをする赤ちゃんをかわいく思えなかったり、その行動にイライラしたりするならば、それはお世話をする大人の不安や疲れがピークに達していることが原因かもしれません。
そのときは、離れることを赤ちゃんに「慣れさせよう」とするのではなく、まずは大人自身の悩みの理由とその解決方法を考えることが大切です。
後追いが始まったときの注意点
自分で移動できるようになると、赤ちゃんはわずかな段差で転んだり、立ち上がったときにバランスがとれず後ろに倒れたりすることがあります。移動範囲が広がることで、思いがけないものに触れたり、口に入れたりする危険性が増します。
また、親が後追いに気づかずに、赤ちゃんが閉まるドアにはさまったり、階段から転落したり、台所でやけどをするという事故が実際に起きています。後追いがきっかけで起こる事故を防ぐためには、以下の対応を参考に環境を整えることが大切です。
- 階段やキッチン、浴室など行ってほしくない場所にベビーゲートを設置する
- ベビーサークルなどで赤ちゃんが自由に動き回れる安全なスペースを作る
- 赤ちゃんがどこにいるか確認してからドアの開閉をする
- ドアや窓、網戸に指をはさまないようにストッパーやカバーを取りつける
- 家具の角に専用のカバーやガードをつけて衝突によるけがを防ぐ
- バランスを崩して転倒することがあるのでジョイントマットやクッションマットを敷く
- 棚の引き出しや扉にロックをする
- やけどや誤飲の原因となるものは手の届かない場所に置く
- 事故予防のための便利グッズは乳幼児が簡単に扱えない構造の製品を選ぶ
ベビーゲートなどは、安全基準を満たした製品やチャイルドロックなど安全対策機能のついた製品を選びましょう。製品の特性や使用する子どもの成長状況から、耐用年数の目安は2年で、使い回すことは想定されていません。正規ではないルートでの販売やフリーマーケットサイトなどの拡大によって、安全基準を満たしていない製品や使用状況が不明なリユース品が流通している状況なので、製品選びや使用方法には注意が必要です。
後追いはいつか懐かしくなる!
寝返りやハイハイなどで自由に移動できるようになると、後追いが始まります。後追いが激しいと困ってしまうこともありますが、赤ちゃんにとってママやパパなどの特別な存在が「見えることで安心」から「見えなくても安心」へと変わっていくことを信じて、温かく見守っていきましょう。
【参考文献】
・儀間 裕貴;大城 昌平(編) 子どもの感覚運動機能の発達と支援 改訂第2版 メジカルビュー社 2024
・公益社団法人日本小児科学会 Injury Alert傷害速報(2025年2月閲覧)