日々目覚ましい成長を見せる乳児期は、わが子の成長の様子に一喜一憂するものです。
特に初めて子育てをしているママやパパはわが子と周りの赤ちゃんとを比べたり、育児書やWEBサイトに書いてある赤ちゃんの成長の目安を参考にしたりするでしょう。今回のテーマは「赤ちゃんのずり這い」です。けいこ豊洲こどもクリニック院長の塚田佳子さん監修のもと、一般的にずり這いはいつから始まるのか、時期の目安や兆候、注意点などを解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん
小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
ずり這いとは?
ずり這いとは、名前のとおり赤ちゃんがお腹から下をつけたまま身体や足を引きずるように進む動作です。床にお腹がついた状態のまま、腕の力や足の裏を使って床を押しながら前進します。
ハイハイの種類の1つ
「ハイハイはよく聞くけれど、ずり這いはあまり聞きなじみがない」という人もいるかもしれません。
ハイハイとは自力歩行に至るまでの成長過程に見られる状態で、ずり這いもハイハイの種類の1つです。ハイハイには主に「ずり這い」「ハイハイ」「高這い」の3種類があり、一般的にずり這いは、ハイハイの前段階に見られます。ずり這いを経験することで筋力が発達し、ハイハイに移行する子どもはたくさんいます。
一般的なハイハイとの動作の違い
大きな違いは「お腹が床についているか、いないか」です。お腹をつけたまま床を這うずり這いとは異なり、ハイハイは膝を曲げてお腹を持ち上げた体勢で移動します。なお、赤ちゃんが歩行に至るまでの成長過程は一人ひとり違うため、ずり這いをせずにハイハイできる子や、ずり這いやハイハイをしないでつかまり立ちをする子などさまざまです。
“高這い”をする子もいる
高這いとは膝を曲げずに足と腕を伸ばし、お尻を持ち上げた状態で手と足を床につけて進む動作です。
ずり這い→ハイハイ→高這いの順番で習得するのが一般的です。しかし、高這いをしない子や、片足だけ伸ばしたり引きずったりしてハイハイする子など、子どもによって姿勢や進み方には違いがあることを認識しましょう。
ずり這いはいつから始まる?
子どもの成長には個人差があると言っても、子育てが初めてのママやパパは具体的にいつ頃からどんなことができるのか気になるもの。
また、子育てが初めてではなくても、きょうだいで成長や発達のスピードに違いがあると不安に思うこともあるでしょう。ここでは、ずり這いが始まる時期の目安や成長への影響について解説します。
生後6~9か月頃が多い(個人差あり)
母子健康手帳の発達時期の目安によると、6〜7か月頃に寝返りを始め、9〜10か月頃からハイハイを始めると記載されています。寝返りとハイハイの間にずり這いを始める子が多いことを考えると、6〜9か月頃がずり這いを始める時期だと考えられるでしょう。
6〜9か月頃は首が据わり上体を起こしたり寝返りをうったりできるようになり、視界に入る世界が広がることで好奇心が強くなる時期でもあります。
好奇心から動きたいという欲求が高まり、さまざまなものに手で触れたり、自力移動を試みるなど大きな成長や発達が見られることが多いです。
ただし、時期は一般的な目安であり、ずり這いをしない子もいるため、6〜9か月の間にずり這いをしなくてもあまり心配をせずに様子を見守りましょう。
ずり這いをしなくても成長に影響はない
お腹を床につけたまま前進するずり這いに比べ、お腹を持ち上げて移動するハイハイは筋力が必要です。
筋力にも個人差があるため、すでに筋力が発達している赤ちゃんはずり這いをせずにハイハイができるようになるケースもあります。ずり這いをしないことで成長に影響を与えることはありません。
前兆や兆候の動きやサインはある?
ずり這いができるようになる前兆や兆候のサインには、「首が据わる」「うつ伏せの姿勢で手足を動かす」「寝返りがうてる」「お座りができる」の4つがあります。それぞれ詳しく解説します。
首が据わる
一般的に赤ちゃんの首が据わる時期は3〜4か月頃のため、ずり這いを始める目安よりも3〜5か月ほど早いです。首が据わってからずり這いに至るまでには、次に紹介するいくつかの段階があります。首が据わることはずり這いに向かう最初のサインと言ってもよいでしょう。
うつ伏せの姿勢で手足を動かす
首が据わると、うつ伏せの姿勢で頭を持ち上げることができるようになり、さらに動きたいという欲求で手足が動きます。
赤ちゃんは手足を浮かせた状態だと体が不安定になるため、手足を動かしてバランスを取ろうとするのです。そうしてバランスを取るうちに体幹が発達し、ずり這いの動作ができるようになっていきます。
寝返りがうてる
筋肉が発達すると、仰向けからうつ伏せへと自分の力で体勢を変える寝返りをうてるようになります。
寝返りは、ずり這いへの大きな一歩です。うつ伏せの姿勢から手を伸ばして前に進もうとするようになり、徐々にずり這いができるようになります。
お座りができる
腰回りやお尻の筋肉が発達すると、床に手をついてお座りができるようになります。お座りとずり這いが同時期にできるようになる子も、お座りの前にずり這いをする子もいます。
もし、ずり這いの前にお座りができれば、もうすぐずり這いができるようになるサインです。逆に、お座りの前にずり這いができれば、もう少しでお座りができるようになるサインだと捉えられるでしょう。
ずり這いが始まったときの注意点
ずり這いをするようになると、赤ちゃんの行動範囲はそれまでに比べて格段に広がります。行動範囲が広がるということは、思わぬ事故やケガのリスクも格段に増すということです。ずり這いを始めた赤ちゃんの安全を守るための4つの注意点を解説します。
目を離さない
赤ちゃんが自力で移動できないうちは、口に入れてはいけないものや壊れやすいものなど危険なものは赤ちゃんから離れた場所に置いておけば安全でした。
しかし、ずり這いで好きな所に移動できるようになれば、予期せず危険なものに近づいてしまう可能性は高くなります。赤ちゃんから目を離さず、安全を守ることが鉄則です。
衝突・転落対策をする
家の中には衝突の可能性がある家具や、転落の危険がある階段などの段差があります。危ない場所をチェックして、「家具の角にクッション材を貼りつける」「ゲートやフェンスを設置する」などの安全対策が必要です。
コンセントや家電の安全性を確保
家の中は、家具だけではなく電化製品もたくさんあります。電化製品は、場合によっては発火や感電などをする可能性もあるため危険です。
「コンセントにカバーをする」「ガードで囲う」「不必要な家電は片付ける・手が届かない場所に置く」などの配慮を行いましょう。
動きやすい服を着せる
ずり這いをするようになったら、動きやすい服を着せることも大切です。せっかく自分で動けるようになったというのに、思うように動けない服装では赤ちゃんのストレスになってしまいます。
また、服のサイズが合わないと移動の途中で足が引っかかったり、顔が覆われて呼吸ができなくなったりする可能性もあるため注意しましょう。
焦らずに、赤ちゃんのペースを見守ろう!
子どもの成長や発達には個人差があり、ずり這いやハイハイができる時期や、そのやり方は赤ちゃんによって異なります。
ママやパパは、周りの赤ちゃんと比べて不安に感じることもあるかもしれませんが、焦らず見守りましょう。ずり這いやハイハイをするのは歩行前の短い期間だけ。安全を確保しながら成長を喜び、この貴重な瞬間を動画にたくさん撮って思い出に残してくださいね。
文:西須洋文