
赤ちゃんがいろいろな音や声を出すと、ママやパパはつい気になってしまいますよね。特に赤ちゃんがうなる声は、新米のママやパパにとって心配な音の1つです。
今回は、新生児期(生後28日未満)の赤ちゃんがうなる理由とその対応のヒントについて解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん

自治体や企業等と連携した産前産後ケア事業担当を歴任後、妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための講座運営や相談事業に従事している。
赤ちゃんが「うなる」状態とは?
赤ちゃんは、眠っているときや排便するときなどに、喉の奥から聞こえるような低めの声を出すことがあります。この状態を「うなる」または「うなり声を出す」と表現します。
正常な反応で「うなる」とき
赤ちゃんがうなるのは、特に新生児期から生後3か月頃にかけてよく見られる反応です。お腹にガスがたまったり、排便のためにいきんだりするときに、不快感を和らげるためにうなり声を出すことがあります。うなることで、排便に必要な腹圧をかけることに役立てています。
病気が原因で「うなる」とき
病気が原因でうなるときは、呼吸をするたびに「うーうー」と声を出します。呼吸が苦しいときは、声帯を狭めることで自然に声が出て「うなる」状態になります。この状態は医学用語で「呻吟(しんぎん)」 と呼ばれ、息を吐くときに声帯を少し閉じて気道の圧力を高めることで、呼吸を楽にしようとする防御的な反応です。
「呻吟」と似た症状として、息を吐いたり吸ったりする際に「ぜいぜい」「ひゅーひゅー」と音が聞こえる「喘鳴(ぜんめい)」 があります。これは、喉や気管支などの空気の通り道が狭くなっているときに聞こえる呼吸音です。
赤ちゃんに発熱や鼻水などの症状があり、呼吸と同時にうなり声をあげる場合は、すぐに小児科を受診することが大切です。
新生児期の赤ちゃんがうなるときはどんなとき?
新生児期の赤ちゃんがうなる理由と対応のヒントについてお話しします。
排便時に必要な腹圧をかけるとき
赤ちゃんはママのお腹の中では便を出さず、肛門を閉じたままで過ごしてきました。お腹の外に出てから初めて自分で排便する方法を学びます。
赤ちゃんは排便に必要な腹圧をかける過程でうなり声を出すことがあります。排便する10〜30分前からうなり声を出したり、いきんだり、泣いたりすることもありますが、これも正常な反応です 。赤ちゃんがうなると苦しそうに見えますが、痛みを感じているわけではありません。
赤ちゃんが排便時にうなるのは生まれてから数週間続くことがありますが、スムーズに排便する方法を覚えると自然にうならなくなります。
母乳やミルクを飲み過ぎたとき
赤ちゃんが母乳やミルクを必要な量よりも多く飲んだときに、消化する過程でうなることがあります。
赤ちゃんが飲み過ぎてうなっているのか心配な場合は、産後の健診や訪問時に助産師や保健師などの専門家へ相談しましょう。赤ちゃんの反応に合わせた授乳の姿勢や量、タイミングを工夫することでうなる回数が減るかもしれません。
げっぷやおならを出したいとき
赤ちゃんは大人に比べてお腹の中のスペースが狭いため、胃腸に少し空気がたまるだけでもお腹が張りやすく、げっぷやおならが出にくくなって、うなり声を出す場合があります。
特に新生児の胃を支える靭帯は、ママのお腹の中にいたときのホルモンの影響でゆるくなっているため、胃の位置がねじれやすく、げっぷが出にくくなりがちです。成長と共に自然と治っていくケースが多いですが、少なくとも胃の位置が定まってくる生後3か月頃までは、げっぷが出るように促すことを習慣にしましょう。
新生児期の赤ちゃんがうなる理由とその特徴
赤ちゃんがうなり声を出す理由はそのほかにもあり、新生児期ならではの特徴が関係しています。
睡眠中に身体から音や声が出やすいから
新生児は大人とは異なり短い睡眠サイクルで何度も寝たり起きたりして昼夜の区別がありません。浅い眠りと深い眠りが切り替わるとき、うなり声に聞こえるような寝言や泣き声を出す場合もあります。
また、新生児は身体の機能がまだ発達途中であるため、しゃっくりや鼻が鳴る音、消化管の動く音など呼吸とは無関係な声や音を出すことがあります。ママやパパは、予想外の大きな音や声を聞くと赤ちゃんが苦しんでいるのではないかと心配するかもしれませんが、実際にはこれらの音のほとんどは問題ありません。
胃酸が逆流しやすいから
新生児は胃酸が逆流しやすく、母乳やミルクをよく吐き戻し、その際にうなり声に似た音が出ることがあります。新生児が飲んだ後に吐き戻すのはよくあることです。
吐き戻しは成長すると自然に改善されますが、飲んだ量よりも多く吐き続けたり、毎回うなり声を出して吐く場合は、早めに小児科へ相談しましょう。
空気の通り道の構造が未熟だから
赤ちゃんはスムーズに母乳やミルクを飲むために、一般的に生後数か月間は口ではなく鼻で呼吸します。鼻腔が狭いため鼻水や逆流した母乳やミルクで鼻が詰まりやすく、風邪をひいていなくても鼻が詰まっているような音がしたり、口や鼻から出る音がうなり声のように聞こえることがあります。
また、新生児の喉頭(こうとう:喉の気道や声帯のある部分)はやわらかく未熟なため、息を吸うときに喉頭が引き込まれて気道が狭くなり、呼吸と同時に音が聞こえる場合も。この音をうなり声と思い、心配するママやパパは少なくありませんが、身体の発達とともに改善するのであまり心配する必要はありません。
声を出すと楽しいから
赤ちゃんは、泣いたときや身体を動かしたときに、偶然「あー」や「うー」と声を出すことがあります。言葉で表現できない代わりに、泣き声やうなり声で気持ちを表現することもあります。発声したときの喉の感覚が心地よく、わざとうなり声を繰り返す赤ちゃんもいます。赤ちゃんは言葉が行動に結びつくことを少しずつ覚えていきますのでママやパパは赤ちゃんの声に応えてあげることが大切です。
赤ちゃんが「うなる」ときの受診の判断は?
赤ちゃんがうなるのは珍しいことではありませんが、気になる場合はその様子を確認し、適切に対応することが重要です。「うなる」以外にも以下の症状がある場合は、早めに小児科を受診しましょう。
- 発熱や鼻水、咳などの症状がある
- 顔色や口唇の色が普段と違う
- 呼吸が普段よりも速い
- 肩で呼吸している
- 鼻の穴を膨らませながら呼吸している
- 呼吸すると鎖骨や胸のあたりがくぼむ
赤ちゃんがうなることが気になったら相談しましょう
新生児期の赤ちゃんにうなる以外に特に症状が見られない場合、それは病気ではなく、赤ちゃんの成長過程における自然な反応であることが多いです。
うなることが気になる場合は、出産した病院や小児科を受診したり、産後の健診や訪問の際に専門家へ相談しましょう。
【参考文献】
仁志田 博司 新生児学入門 第6版 医学書院 2024
Stridor&Laryngomalacia:Is MyBaby’s Noisy Breathing Serious? The AAP Parenting Website(2025年5月閲覧)