新生児の赤ちゃんが過ごす室内の温度・湿度は大人と一緒でよいのか、気になる方もいるのではないでしょうか。特に夏場や冬場は外気温との差が激しいため、赤ちゃんの体に負担がかからないか心配です。
この記事では、けいこ豊洲こどもクリニック院長の塚田佳子さん監修のもと、新生児にとって快適に過ごせる室温や湿度の目安、そして室内の環境づくりのコツを紹介します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん
小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
新生児がいる部屋に適した室温・温度は?
新生児期の赤ちゃんは、1日のうちほとんどの時間を寝て過ごします。
まだ体温調節をする機能が未熟なため、室内の設定温度や服装などを調節し快適な環境を整えてあげましょう。
【春・夏】室温は25~28度
春や夏の時期は、室内の温度を25~28度にするとよいでしょう。
エアコンや扇風機などを使うときは、外との気温差が5度以内になるようにしてください。
冷たい空気は下にたまりやすい性質です。サーキュレーターや扇風機などで室内の空気を循環させると、温度が下がり涼しくなるでしょう。
また、赤ちゃんは新陳代謝がよく自律神経が未発達なため、汗をかくことで体温調節をしています。
頭や体が汗でぬれていたらその都度、拭いたり着替えさせたりして体を清潔にしてあげてください。
【秋・冬】室温は20~25度
秋や冬の時期、室内の温度は20~25度がおすすめです。
個人差はありますが、赤ちゃんの平熱は36.3~37.4℃くらいで大人よりも体温が高めなため、エアコンやオイルヒーター、ストーブなどの暖房器具を使う場合は、設定温度に注意しましょう。
服装は重ね着が基本です。短肌着と長下着を重ねた上にツーウェイオールを着せるなどして、周囲の温度や状況に合わせて脱ぎ着をさせてください。
冬場でも汗をかいたら、こまめに拭いたり着替えさせたりしましょう。
湿度は50~60%を目安に
室内の湿度は、50~60%くらいが理想的です。
湿度が高すぎるとジメジメと不快を感じるほか、カビやダニなどが発生する原因になることも。
一方で湿度が低すぎると肌や鼻、口が乾燥し、肌のバリア機能が低下して感染症を起こしやすくなります。
エアコンの除湿機能や除湿機、加湿器などを状況に応じて利用し、快適に過ごせる環境づくりをしましょう。
部屋の中が暑いときの赤ちゃんのサイン
新生児は体温調節機能が未熟なうえに、自分から「暑い・寒い」と話せないため、体の状態を注意深く観察することが大切です。
以下に説明するような様子が見られたら、適切に対応しましょう。
声を上げて泣き、母乳やミルクをほしがる
赤ちゃんの機嫌が悪く声を上げて泣くとき、暑さが原因の場合があります。
体の水分が失われて脱水症状の心配もあるため、様子を見ながら母乳やミルクをほしがるだけ与えてください。
頭や背中が汗ばんでいる
頭に汗をかいてべっとりしていたり、背中に手を入れてみて汗をかいていたりするときは、室内が暑くなっているかもしれません。
エアコンの設定温度を見直し、肌着を着替えさせる、もしくは1枚脱がせるなどしましょう。
汗をかいたままで過ごしていると、体が冷えて体温が下がりすぎるほか、あせもや湿疹などの肌トラブルを起こす可能性があります。
顔が赤い
赤ちゃんの顔全体やほっぺが赤くないか、機嫌は悪くないかをチェックしましょう。
顔が赤くなるのは体温の上昇により血管が広がるためで、その様子が見られたときは室内の温度が高い、もしくは服を着せすぎなどの要因が考えられます。
このような状態のときは、エアコンの設定温度を下げたり、肌着を脱がせたりしてください。
お腹や背中、足の裏を触ると熱い
赤ちゃんのお腹や背中、手や足の裏を触ってみて熱いときは、体に熱がこもって暑いと感じているサインです。
先ほどと同様にエアコンの設定温度を見直して、汗をかいていたら肌着を着替えさせましょう。
また、必要に応じて赤ちゃんの体温を測り、呼吸の状態が安定しているかなども観察しておくとよいでしょう。
部屋の中が寒いときの赤ちゃんのサイン
赤ちゃんは手や足の裏などを使って、体温を調節しています。
手足が冷たくてもお腹や背中が温かいなら問題ありませんが、体が冷たく顔色が悪いときは注意が必要です。
お腹や背中がひんやりと冷たい
新生児のお腹や背中を触ってみて、いつもよりも冷たく感じたら体の中から冷えている状態です。
エアコンやストーブなどの暖房器具の設定温度を上げたり、洋服を1枚重ねたりしてください。
顔色や唇の色が悪い
寒いと血管が収縮して血流が悪くなります。
いつもと比べて顔色が悪く、唇がむらさき色になっている場合は、暖房器具の設定温度を高くしたり洋服を1枚重ねたりするほか、おくるみで体を包んでしっかりと体を温めましょう。
赤ちゃんにとって快適な部屋づくりのコツ
エアコンや扇風機などの冷暖房器具を利用して室内環境を整える場合、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。
赤ちゃんにとって快適な部屋づくりのポイントを紹介します。
風通しのよい部屋が理想
新生児が過ごす部屋は、風通しのよいところがおすすめです。
赤ちゃんは大人より体温が高く、“暑がり”だからです。また空気を入れかえることで、カビなどの発生を防ぎ、部屋の空気をきれいに保てます。
生後2週間を過ぎた頃からは、窓を開けて、少しずつ外の空気や風に赤ちゃんを触れさせるのもよいでしょう。
日差しの強い部屋は避ける
紫外線から赤ちゃんを守るために、直射日光が当たらない部屋にしましょう。赤ちゃんの皮膚は大人に比べてデリケートなので、紫外線による悪影響を受けやすいです。
適した部屋がない場合も、UVカット機能のついたカーテンなどを使用すると紫外線を防ぐことができます。
冷暖房器具の風が直接赤ちゃんに当たらないように
冷暖房器具の風は、赤ちゃんの顔や体に直接当たらないようにしましょう。
エアコンや扇風機などの風が直接当たると、体の水分が奪われて脱水症状を起こしやすくなるため、危険です。
なるべく風量は弱めに設定し、壁や天井などに一度風を当てて部屋全体に風を送るように工夫をしてください。
赤ちゃんの近くに温度計・湿度計を置く
同じ室内でも、場所によって温度が異なることがあります。
赤ちゃんを寝かせるのに床に敷いた布団を使うのか、高さのあるベビーベッドを使うのかによっても温度差がでます。
そのため、赤ちゃんの近くにも、温度計・湿度計を置いてチェックをしましょう。
布団で寝かせるときは床と布団の間にカーペットやラグを敷いておくと、下からの冷気を防いでくれます。
冷暖房器具の掃除はこまめに行う
エアコンや扇風機などの冷暖房器具は毎日使っていると、ほこりや汚れがたまっていきます。
掃除をせずに放置するとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギーの症状や冷暖房が効かないといった原因になってしまうことも。
フィルターや羽のほこりは、定期的に掃除しましょう。
エアコン内部にたまった汚れは、専門業者にクリーニングを依頼するときれいにできます。
赤ちゃんの健康のために掃除をこまめに行い、清潔な状態を心がけてください。
赤ちゃんにとって快適な環境づくりを
新生児の赤ちゃんは体温調節がうまくできないため、エアコンや扇風機、暖房器具などを使って快適に過ごせる環境を整えましょう。
今回紹介した温度や湿度は一般的な目安のため、室内の状況に応じて適宜、調整してください。
もし範囲内の設定温度になっていなくても、赤ちゃんが機嫌よく過ごせているならあまり神経質にならなくても大丈夫でしょう。また、温度や湿度だけでなく、赤ちゃんの体を触って汗や体温を確かめるなど、様子をこまめに観察することが大切です。
文:misono