
赤ちゃんが、ママやパパ以外の人に話しかけられて泣いたり、目を閉じて隠れたりする人見知り。同じ月齢でも、人見知りが激しいタイプもいればそうでないタイプもいて不思議ですよね。今回は、赤ちゃんの人見知りがいつから始まるのか、人見知りが起こる時期の身体と心の発達と、それに対応するためのヒントについてお話しします。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん

自治体や企業等と連携した産前産後ケア事業担当を歴任後、妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための講座運営や相談事業に従事している。
赤ちゃんはなぜ人見知りをする?
赤ちゃんは、最も多くの時間を一緒に過ごす人々(多くの場合、ママやパパ)を好むため、知らない人に対しては泣いたり、ぐずったりして、人との交流を避けようとする反応を示すことがあります。この反応を人見知りと呼び、泣いて不機嫌になる以外にも、親にしがみつく、隠れる、顔を背ける、目を閉じる、とても静かになることがあります。
人見知りは、赤ちゃんが見知らぬ人へ抱く恐怖心によるもので、成長の過程で起こるごく自然な反応です。
人見知りと似た反応で、知らない場所や慣れない状況で泣いたり、不機嫌になったりするいわゆる場所見知りがあります。場所見知りも、安心できる場所とそうでない場所を区別できるようになってきたことの表れです。
いつから人見知りは始まる?
人見知りは、出会ったことのある人とそうでない人の顔を見分けられるようになる生後6か月頃から始まり、生後7〜10か月頃により強くなります。数か月続く場合もあれば、もっと長く続く場合もあります。生後6か月未満でも、人や場所の区別がつくようになると、泣いたり、ぐずったり、固まって表情を動かさないなど、不安や恐怖を示すことがあります。
記憶力がつく1歳頃から2歳を迎える間に落ち着くことが多いですが、子どもによって程度や持続する期間は異なり、さらに長く続く場合もあります。
人見知りが起こる時期の身体と心の発達
生まれたばかりの赤ちゃんは、ひとりでは動けないので「お腹が空いた」「眠い」「抱っこしてほしい」という欲求を満たすため、手足を動かしたり、声を出したり、泣いたりして、ママやパパを呼び寄せます。ママやパパに抱っこされて思いが伝わり、ホッと安心する経験を毎日積み重ねていきます。
この安心を何度も経験しながら、寝返りやハイハイができるようになっていくと、不安を感じたときにその場で泣き続けるだけではなく、ママやパパのもとへ自分から動いていく、いわゆる後追いを始めます。
ママやパパを安全基地として、少し離れて、すぐに戻って安心して、また離れることを繰り返し、親以外の人や見知らぬ場所への興味や好奇心が芽生え、知らない世界を知る経験を積み重ねていきます。
人見知りと分離不安
人見知りと似た不安を示す赤ちゃんの反応のひとつに、分離不安があります。
分離不安は、愛着を持っている相手(多くの場合、ママやパパ)から離れることに対して強い不安を示す反応です。多くの場合、人見知りと同じ時期に表れ始めることが多いですが、それぞれ異なる心理的な反応です。
人見知りの不安とは、赤ちゃんが知らない人や会って間もない人と関わるときに感じる不安のことです。一方、分離不安とは、赤ちゃんが一人ぼっちになったり、両親や主な養育者から離れるときに感じる不安のことです。
赤ちゃんが、慣れ親しんだ祖父母やいつも世話をしてくれる人に預けられたときに泣くなどの反応がある場合は、人見知りとしての不安ではなく、分離不安を感じている可能性が高いです。赤ちゃんに見知らぬ人が近づいたときや、初めて会う人と一緒に過ごすときに、その人との交流を避けようとする場合は、その赤ちゃんは人見知りによる不安を経験している可能性があるといえるでしょう。
赤ちゃんは、周囲の人や状況に慣れてくると、少しずつ打ち解けていきます。赤ちゃんの反応が、人見知りなのか、あるいは分離不安なのか、いちいち見極める必要はありません。ゆっくり時間をかけて打ち解けていくタイプだと思って、焦らず、急かさずに見守りましょう。
人見知りをする子としない子、何が違う?
日々の経験を通して、よく遊んでくれる人とそうでない人、自分を受け入れてくれる人とそうでない人を見分ける力も育っていきます。いろいろな人に会う機会が少ないと、この見分ける力が弱いために、知らない人に対する不安が強く表れることがあります。自分を受け入れてくれる人が多いほど、人見知りの程度が軽い傾向にあります。
また、生まれ持った気質の違いも大きく影響します。どんな環境でも積極的に挑戦していく子もいれば、未知の世界や知らない環境をできるだけ避けようとする子もいます。おおらかな子もいれば、ちょっとした音や刺激に敏感な子もいます。慎重な赤ちゃんは恐怖心や警戒心が強いため、激しく泣いたり、ぐずったりするのは自然なことです。
人見知りに対応するためのヒント
人見知りは赤ちゃんの成長過程における自然な反応の一部ですが、恐怖心や不安を和らげるためにできることがいくつかあります。
無理強いはしない
人見知りをした相手やその状況に早く慣れさせようと無理強いをしてはいけません。
赤ちゃんが初対面の人にとても緊張してしまった場合は、赤ちゃんが安心できるアイテム(おもちゃや毛布など)であやしたり、みんなで一緒に遊ぶなどの別の方法を試してみてください。また、赤ちゃんが落ち着くまで初対面の人から少し距離を置き、しばらく経ってからもう一度挑戦してみるとよいかもしれません。赤ちゃんの心の準備が整うまで、安心できる時間を与えましょう。
言葉で情報を伝える
コミュニケーションや言葉の発達が進んでいくと、物事や感情を言葉で理解できるようになります。理解が進むと気持ちのコントロールが可能になり、不安の解消に役立ちます。赤ちゃんは言葉で伝わらないとあきらめずに、言葉で情報を伝えましょう。
「初めて会うからびっくりしたね。一緒に挨拶しようね」「たくさん人がいて、ちょっと怖いね。どんな人がいるか覗いてみよう」など、赤ちゃんの気持ちに寄り添いながら、不安を和らげる方法を具体的に伝えましょう。
いろいろな人に会う機会を持つ
赤ちゃんは、人見知りや場所見知りを繰り返しながら、知らない人や慣れない場所でも怖くないことを少しずつ学んでいきます。人見知りが始まっても「家族以外に預けられないのでは?」「外出しないほうがよいのでは?」と嘆く必要はありません。赤ちゃんがいろいろな人に会う機会は、積極的に持ち続けましょう。
目を合わせない
人見知りをしている赤ちゃんは「近づきたいけれど怖い」といった心の葛藤を抱いていることがあります。「相手に近づきたい」という気持ちと「相手から離れたい」という思いが交錯する中で、赤ちゃんは相手をじっと見つめます。そのとき、相手が視線を返すと逆に相手を避けてしまうこともあります。一方で、相手が目を逸らすと、赤ちゃんは興味を持って観察を続けることが多いです。
人見知りの赤ちゃんと関わる相手には、人見知りの時期であることを伝えて、その相手や場の雰囲気に慣れるまで、しばらく赤ちゃんと目を合わせないようにお願いしてみましょう。赤ちゃんの緊張感や警戒心を少しずつ和らげる手助けになるはずです。
ママとパパが落ち着く
赤ちゃんが人見知りしたら、まずはママとパパが落ち着きましょう。
赤ちゃんはママやパパの感情に敏感です。もし大人が心配したり悲しそうにしていると、赤ちゃんはその雰囲気に気付き、安全ではないと感じ、動揺することがあるかもしれません。ママやパパが一緒にいるから大丈夫という安心感を得られるように、笑顔を見せたり、リラックスして過ごしましょう。
人見知りの始まりは、子どもの成長の証!
人見知りは、人や場所を区別できる力が育まれる過程で起こります。「誰とでもすぐに打ち解けてほしい」というママやパパの気持ちとは裏腹に、赤ちゃん自身は世界観の変化に戸惑いを感じているはずです。赤ちゃんの不安や恐怖心を和らげる手助けをしながら、その成長の証を温かく見守っていきましょう。
【参考文献】
・儀間 裕貴;大城 昌平(編) 子どもの感覚運動機能の発達と支援 改訂第2版 メジカルビュー社 2024
・松田佳尚 赤ちゃんの人見知り行動 日本新生児成育医学会雑誌 27(3) 474ー474 2015