「4歳の壁」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。4歳ともなると赤ちゃんだったころから随分と成長して、自分の気持ちを言葉にして伝えられるようになってきます。また身の回りのことなど、自分でできることも増えていきます。今回の記事では、4歳ごろの発達段階や特徴を踏まえ、「4歳の壁」やその時期の子どもとの向き合い方について詳しく解説します。
この記事のもくじ
「4歳の壁」とは?
4歳ごろは自分でできることが増える半面、うまくできないことに対してまだ自分で気持ちをコントロールするのが難しい時期でもあります。
ここではその時期に訪れる「4歳の壁」とは何か、「イヤイヤ期」との違いは何か解説します。
「4歳の壁」は成長に戸惑い、不安を感じている状態
「4歳の壁」とは、子どもが自分自身の急激な成長に戸惑ったり不安を感じたりする状態を表しています。
身体的、能力的には成長しても自分で感情を抑制したり統制する力が未熟なため、気持ちのバランスをとるのが難しいことが主な原因です。
4歳ごろは脳の発達にともない、さまざまなことについて理解し、自分の気持ちを言葉にできるようになります。
しかし、なんでも自分で完璧にできるわけではないため、気持ちの中に葛藤が芽生え、不安を感じたり戸惑ったりすることが多くあるのです。
また、幼稚園や保育園の先生や友だちなど、人との関わりが増えることで、コミュニケーション能力も身に付いてくる時期ですが、他者と関わる中でも思い通りにならないことはたくさんあるため、「イライラして癇癪(かんしゃく)を起こす」「反抗する」「泣く」などの行動が見られます。
イヤイヤ期との違い
4歳の壁は、2歳ごろの「イヤイヤ期」に似ていると思う人も多いでしょう。
しかし、イヤイヤ期のころは自分の気持ちをうまく言葉で表せないのに対し、4歳ごろの子は嫌なことを自分の言葉で伝えられることが大きな違いです。
4歳ごろは気持ちを言葉で表せますが、自分の思い通りにいかない場面でイヤイヤ期と似たような行動をとるのです。
また、イヤイヤ期は子どもの一時的な欲求が原因となるのに対し、4歳ごろの子どもの行動には複雑な感情や状況が原因となることも特徴的です。
4歳の子どもの発達段階
発達段階には個人差がありますが、ここでは4歳ごろの子どもの、一般的な4つの発達段階を解説します。
基本的な生活習慣が身に付く
4歳ごろの子どもは基本的な生活習慣が身に付き、食事や排泄、衣服の着脱など身の回りのことは自分でできるようになります。
今まではママやパパの援助が必要だったことも自分でできるようになり、自信が付いていきます。
社会性が身に付く
言葉が発達し、自分の気持ちを人に伝えられるようになります。また、理解力が増してルールやマナーを守ることができ、社会性も大きく発達する時期です。
そのため、友だちと一緒に遊ぶときも順番を守ったり、仲良く協力し合ったりできるようになります。
運動能力が身に付き、複雑な動きができるようになる
運動能力が大きく発達するのも、4歳ごろの特徴です。
「走る」「跳ぶ」「ボールを使う」など身体全体を使った運動機能のほか、手先の運動機能も発達して、ハサミで紙を切ったり、丁寧に糊付けをしたりするなどの作業ができるようになります。
知能や言語が発達し、理解力が上がる
4歳ごろは知能や言葉が著しく発達することで、理解力も増す年齢です。
理解力が増すことで、文字や数などさまざまな事柄に興味が広がる子どももいます。
「4歳の壁」の特徴
ここでは、「4歳の壁」に見られる主な特徴を紹介します。
行動の特徴は、イヤイヤ期とよく似ていますが、それが起きる原因は異なります。
特徴①親の指示に反抗したり、無視したりすることが増える
4歳ごろは自己主張がより強くなり、自分の思いや希望が通らないことにイラ立ち、ママやパパの指示に対して嫌だと反抗したり無視したりなどの行動が増えますが、ただ単に親に反抗しているわけではありません。
自分のやりたいことや希望が明確にあるため、ママやパパの言うことと自分の思いに差異が生じたときに起こります。
特徴②癇癪や泣き喚くなどの行動が増える
癇癪を起こしたり泣き喚いたりすることが増えるのも、特徴の1つです。
理由もなく癇癪を起こすわけではなく、「もっと遊びたい」「1番になれなかった」などのほか、他者との関わりの中で思い通りにならないときに、大きな声で泣き叫んだり、感情が爆発したりすることがあります。
特徴③乱暴な言葉や行動をすることがある
自分の思い通りにならないとき、「バカ」「大嫌い」などと言ったり、「叩く」「蹴る」などの行動を起こしたり、乱暴な面が見られることがあります。
強引にでも思いを通したい気持ちが抑えきれずに、そのような態度になって現れます。
「4歳の壁」への上手な向き合い方
子どもが癇癪を起こしたり乱暴なことをしたりすると、ママやパパもつい冷静さを失うこともあるかもしれません。
しかし、「4歳の壁」に直面している子と向き合うときは、冷静さが何より大切です。ここでは、「4歳の壁」の子どもと向き合うために有効な4つの対処法を解説します。
子どもが表現しきれない気持ちを代弁してあげる
泣きわめいて癇癪を起こしたり、乱暴な行動をしたりしているときの子どもは、自分でもどうにもならない状態になっています。
そんなときはママやパパが子どもの気持ちを理解して代弁することで、子どもが落ち着くケースがあります。
子どもの気持ちがわからないときは子どもの話をしっかり聞いたり、落ち着くまで少し時間を置いたりするなどして、あせらず対応しましょう。
感情的に叱らずに、冷静に話をする
忙しいときや時間がないときなどに、感情的に子どもを叱ってしまった経験がある人もいるかもしれません。
しかし、感情的に叱ると、子どもはますます気持ちが抑えられず行動が激しくなることがあります。
大人が冷静さを失わず落ち着いて話をすることで、子どもは一生懸命に思いを伝えようとするでしょう。話を聞くときは子どもの思いや話を否定せず、まずは受け止めることが必要です。
暴言に対しては、嫌な気持ちになることをしっかり伝える
乱暴なことを言われたりされたりしたら、相手は嫌な気持ちになることを伝えましょう。
「そんなことを言われるとママは悲しいよ」など、ママやパパの素直な気持ちを伝えると効果的です。
暴力に対しては、言葉とスキンシップで対応する
子どもの暴力に対して暴力で返してはいけません。優しい言葉で語りかけたり、スキンシップをしたりしましょう。
子どもを抱きしめたり背中をさすったりすることで、子どもの気持ちは少しずつ落ち着いていきます。
4歳ごろは暴力がいけないことだとわかっている子が多いですが、抑えられずにしてしまっているケースがほとんどです。
気持ちが落ち着けば悪かったと反省し、謝ることもできるでしょう。
発達段階を理解して「4歳の壁」を乗り越えましょう!
「4歳の壁」は、ほとんどの子どもが成長過程で通る道です。そのときは大変でも、必ず乗り越えられるはず。
ママやパパも子どもの発達段階について理解を深めておけば、成長の一段階だと捉えられ、広い気持ちで受け止められるようになります。
過ぎてしまえば懐かしく思い出せる日が必ず来ると信じて、愛情をもって接しましょう。
親子一緒に壁を乗り越えた先には、わが子の成長をよりいっそう感じる日々が訪れます。
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ライター:西須洋文
勤務経験30年以上の元男性保育士です。
現在はWebライターとして、保育士や子育ての経験を活かして子育てや保育記事を中心に、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。
そのほか、音楽教育であるリトミック講師などフリーランスとして活動中。