成長の節目節目で行われる乳幼児健診ですが、中でも1歳半健診は重要なのだそうです。
この記事では、けいこ豊洲こどもクリニック院長の塚田佳子さん監修のもと、1歳半健診とはどのような位置づけなのか、どのようなことをするのか、解説していきます。
1歳半健診について知っていくと、1歳6か月は成長の大きなポイントであることが見えてきます。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん
小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
1歳半健診の目的とは?
1歳半健診は、正式名称を「1歳6か月児健康診査」と言い、母子保健法で市町村が実施することが義務づけられている定期健診です。満1歳6か月から満2歳に達するまでに受診します。健康な心身の発達をサポートするための制度ですので、不安な点はどんどん相談しましょう。
身体発達の様子を確認する
1歳半検診で確認することのひとつが身体発達の様子です。その子なりに順調に発達しているかどうかを観察します。
精神発達の様子を確認する
もうひとつは精神発達の様子です。ことばの発達や、年齢相応のコミュニケーションが取れているかを見ます。
1歳半健診はどうやって受けるの?
1歳半健診はどのようにして受ければよいのでしょうか。
健診の約1か月前に自治体から案内通知が発送される場合が多い
健診の実施日の約1か月前になると、自治体から保護者宛で検診の案内通知が送られてくることが多いです。集団健診の自治体の場合には、ホームページなどで年間スケジュールを確認できるところもあります。
原則無料で指定医療機関または保健センターで受けられる
1歳半健診は先にも述べたように、法律で定められている健診ですので、基本的に費用はかかりません。
指定医療機関で受ける個別健診の場合と、保健センターなどで受ける集団健診の場合があります。
個別健診の場合は通知が来たら、指定医療機関に自分で予約を取りましょう。集団健診で指定の日時に都合がつかない場合には、担当窓口に相談しましょう。
1歳半健診では何をみるの?
先に1歳半健診では心身の発達を観察するとお伝えしました。この章では、健診の内容をもう少し詳しくお伝えしていきます。
①身体測定
身体測定では、3,4か月健診や1歳健診と同じように、身長、体重、頭囲などを測り、成長曲線に沿った身体の発達をしているかを確認します。
また、最近では、弱視を早期発見するための弱視スクリーニング検査をはじめとした目の検査を行う自治体も増えています。
②普段の様子
子どもの普段の様子を把握するために問診をします。事前に質問票に保護者が書き入れたり、医師や保健師が聞き取りをしたりして、普段の食事のしかたや就寝時間や起床時間を把握し、成長を著しく阻害するような生活習慣がないか確認します。
問診の際に、手指の発達を見るために積み木で遊んでもらったり、ひとりで歩いている様子を見たりすることがあります。これは運動発達の観察です。
また、絵本やパネルなどを見せて「〇〇はどれかな?」と問いかけて指さしできるか、意味のあることばを発するかについても問診中に確認します。ことばは、1歳半くらいだと意味のあることばを3語以上話すのが発達の目安とされていますが、これはあくまでも目安で、子どもの様子を総合的に見て判断されます。
③歯科健診
1歳6か月ともなると乳歯が生え揃う子もでてくる時期ですので、1歳半健診では歯科健診が行われます。歯科健診は別途歯科医院で行う自治体が多いです。
1歳半健診の歯科健診では一般的な歯科健診と同じく虫歯や歯列・噛み合わせのチェック、歯みがき、フッ素塗布、虫歯にならないための生活指導などが行われます。
④診察
衣服を脱ぎ、おむつ1枚の状態で小児科医の診察を受けます。
改めて身体測定の数値を確認するとともに、頭部の大泉門が閉じているか、首や関節などにおかしな様子は見られないか、全身が清潔に保たれているかなどを視診、聴診、触診で総合的にチェックします。
⑤結果の説明と保護者からの相談
最後に健診の結果の説明を受けます。子どもの発達に関して疑問や不安な点がある場合には、このときに相談するとよいでしょう。
1歳半健診での「様子見」とは?
1歳半健診で「様子見」と言われることがあります。「様子見」とはどのような状態なのでしょうか。何か問題があるのでしょうか。
なお、自治体や医師によっては「再診査」という場合があります。「様子見」も「再診査」も同じ内容を指します。
1歳半健診で様子見になるケース
1歳半健診で様子見になるケースには以下のようなものがあります。
・身長、体重の伸びがゆっくり
・ことばがでない
・立てるが、歩けない
様子見とは「現時点では判断がつかない」ということ
様子見は、「現時点では判断がつかないので、様子を見る」ということであり、すぐさま「問題がある」となるわけではありません。身長や体重の伸びで様子見になった場合には1、2か月に一度測定をし、発育の様子を見守ります。
様子見になることで不安な気持ちを抱くママやパパも多いことでしょう。疑問を解決することで気持ちを落ち着かせることができますので、不安な点は質問しましょう。
1歳半健診での「要精査」とは?
1歳半健診で「要精査」と言われることもあります。どのような場合に「要精査」になるのでしょうか。また、「要精査」とはどういうことなのでしょうか。
1歳半健診で要精査になるケース
1歳半健診で要精査になるケースには、次のようなものがあります。
・身長、体重の伸びが明らかによくない
・お座りやつかまり立ちができない
・目が合いにくい、簡単な指示に従うことができない
要精査とは「専門機関で精密検査を受けて」ということ
要精査とは精査(詳しく調べること)が要(必要)、つまり一度専門機関で精密検査を受けてください、ということです。
検査の結果、発達が人一倍のんびりなだけであればそれでよいですし、何らかの病気や障がいが見つかれば早く見つかった分早く対処できます。
1歳半健診を受けるときの注意点
1歳半健診を受けるときには、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。
問診票は記入してから行きましょう
健診のお知らせと一緒に問診票が送られてくるはずです。健診会場に問診票を記入するスペースはありませんので、前もって記入して持参します。また、当日朝の体温を記入するところがある場合は、体温を測るのを忘れないように気を付けましょう。
聞きたいことはメモにまとめて行きましょう
子どもの日頃の様子やくせなど、わざわざ病院に行くほどではないけれど気になっていることはありませんか。健診は小児科の先生や保健師に子どもの発達について質問するチャンスです。聞きたいことはメモにまとめておくと聞き忘れを防げます。
1歳半健診で必要な持ち物
1歳半健診受診時に必要なものは以下の通りです。
- 母子健康手帳
- 問診票
- 健康保険証
- 乳幼児医療受給者証
- おむつセット
- セパレートの肌着
- 脱ぎ着しやすい衣類(前あきがおすすめ)
- 羽織れるもの
- 聞きたいことをメモした紙
- 子ども用水筒
- 子どものお気に入りのおもちゃ、絵本など
- その他自治体から指定されているもの
服を脱いだり着せたりするので、前あきの洋服がおすすめです。また、診察のときにはおむつ1枚になるので、簡単に羽織れるものがあると便利でしょう。
気になることは1歳半健診で相談しましょう
ここまで、1歳半健診の目的や流れを見てきました。
1歳半という大きな成長の節目において、心身の発達に問題がないかきちんと見てもらっておくことで、安心して育児に向き合えます。「何か言われるのでは」と構えるのではなく、成長に問題がないか一緒に確認してもらう機会として前向きに考え受診することをおすすめします。
また、せっかくの機会ですから気になることは発達の専門家である医師や保健師に相談し、晴れやかな気持ちで育児に向かう環境を整えましょう。
文:サカイケイコ