
「試し行動」とは、子どもが大人を困らせるような行動や態度をわざととることです。そんなことをされると、ママやパパは困ってしまいますが、対処法がわかっていれば落ち着いて対応できます。試し行動への理解が足りず、子どもの気持ちを考えずに否定したり叱ったりすると、子どもの気持ちに傷をつける原因になる可能性があるので注意が必要です。
今回は、子どもの試し行動について詳しく解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
ライター:西須洋文さん
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勤務経験30年以上の元男性保育士です。
現在はWebライターとして、保育士や子育ての経験を活かして子育てや保育記事を中心に、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。
そのほか、音楽教育であるリトミック講師などフリーランスとして活動中。
試し行動とは
試し行動とは、子どもが自分の行動に対して、大人がどのように反応するのか、相手にどこまで受け止めてもらえるかを確かめたり、自分自身の限界を試したりするために行う行動全般を指します。
また、子どもの試し行動は、自分と大人(他者)との関係性を確認する作業でもあります。してはいけないとわかっていることをわざとしたり、大人の顔色をうかがいながら反抗的な態度をとったりしているときは、試し行動の可能性があるでしょう。
何歳から始まる?
試し行動は早ければ1~2歳頃から始まり、2歳頃のイヤイヤ期と重なる場合もあります。また、乳幼児期だけに起こるわけではなく、小学生以降も続くこともあるため、気長に向き合うことが必要です。
子どもがとる試し行動の例
試し行動の内容は子どもの性格や年齢などによって個人差があります。また、イヤイヤ期や反抗期との見極めは困難です。試し行動かどうかを判断したいときは、「わかっているのにわざとやっている」のか、「大人の顔色をうかがっている」のか、といった2つのポイントを意識してみましょう。
以下に、試し行動の主な例をご紹介します。
- おもちゃを投げたり壊したりする
- 食べ物や飲み物をわざとこぼす
- 大きな声で泣く
- 下のきょうだいをたたく
- 嘘をつく
- 天邪鬼な行動をとる
- 聞こえているのに無視をする
- 言われたことと反対のことをする
- 静かにしなくてはいけない場所や場面で大きな声を出す
- なんでも否定する
- 暴力的な行為を行う
- 過剰に甘える
試し行動は成長の過程に見られるものですので、過度に心配して悩む必要はありません。
試し行動をする要因
子どもが試し行動をとるときには、いくつかの要因があります。適切な対応をするためには、行動の裏にある感情を理解することが大切です。
試し行動をする主な要因は4つあります。
愛情を確認したい、気を引きたい
ママやパパの仕事が忙しく親子のスキンシップが足りていないときや、弟や妹が生まれたときなど、親の愛情を十分に感じとれないときに試し行動につながる場合があります。親を困らせることで気を引いて、「愛情を確認したい」という思いからです。
環境の変化からくる不安やストレス
入園や引っ越しなど環境に大きな変化があると、不安やストレスを抱えやすいもの。それと同時に、ママやパパも新しい環境に慣れるまで慌ただしく、子どもの不安な気持ちに気づいてフォローする余裕がないことも多いです。その反動で、子どもが試し行動に出ることもあるでしょう。
赤ちゃん返りによるもの
「赤ちゃん返り」とは、ママが妊娠したり、弟や妹が誕生したりすることをきっかけに、上の子が親や周囲からの愛情が減ってしまったように感じて、赤ちゃんの頃に戻ってしまったような振る舞いをする状態です。赤ちゃん返りの時期にも、試し行動が表れやすくなります。できることを「できない」と言ったり、やってほしがったりして甘え、親からの愛情を求めるためです。
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知らない人のことを知りたい
試し行動は、ママやパパに対してだけ起こす行動ではなく、親以外の人に対しても見られます。たとえば、保育園で接する保育士、ファミリーサポートの援助会員さんやベビーシッターなどもその対象となることがあるでしょう。また特に、知らない人に初めて会ったときにも試し行動が表れやすいです。初対面の大人に対してわざと目につく行動をするときは、その人がどのような人物なのか知るために、自分に対してどのような態度をとるのかを観察しようと試みていると考えられます。
試し行動への対処方法5つのポイント
試し行動が見られたら、子どもの感情を理解することが適切な対処をするための第一歩です。そのうえで、次に紹介する5つの対処法を実践しましょう。
①行動の理由を聞く
試し行動の理由がわからないときは、子どもを理解するために話をしっかり聞くようにしてください。子ども自身も自分の気持ちがわからなかったり、きちんと言葉にできなかったりすることもあるでしょう。けれど、ママやパパに話をすることで気持ちの整理がつきやすくなります。
②子どもの気持ちを受け止める
子どもの行動の理由や感情について話を聞いたら、まずはその気持ちを受け止めましょう。言い返したくなることもあるかもしれませんが、子どもは「自分を受け止めてくれた、理解しようとしてくれた」と思えると、それだけで安心感が出て気持ちが落ち着きやすくなります。
③スキンシップの回数を増やす
親子でスキンシップをとることで、子どもは安心して気持ちが満たされることがあります。「手をつなぐ」「ハグをする」「膝に座らせる」など、簡単なスキンシップは効果的です。
④過剰に反応しない
試し行動に親が過剰に反応すると、「ママやパパの気を引けた」と感じ、何度も同じような行動を繰り返して逆効果になる可能性もあるので注意が必要です。そのため過剰な反応は避け、しばらく様子を見るなど落ち着いて対応しましょう。
⑤ダメな行動にはきちんと叱る
試し行動は、子どもの不安な感情の裏返しであることが多いですが、だからといって何をしてもよいわけではありません。先述した通り、子どものもっている“気持ちや感情”は否定しないことが大切ですが、してはいけないことに対しては「よくない」としっかり伝え、気持ちではなく“行動”を制限しましょう。
また叱るときは、感情的になったりしないよう注意しながら、わかりやすい言葉で伝えることも忘れずに。
積極的なコミュニケーションや愛情表現を!
子どもは不安やストレス、親の愛情を感じたいなどの理由で試し行動をとるときがあります。対応するママやパパは大変ですが、まずは子どもを理解し、気持ちを受け止めることが大切です。そのためにも日頃から親子のコミュニケーションを積極的にとり、愛情をしっかりと伝えていきましょう。