
育児が忙しい日々で、たまには好きなお酒を飲んで気分転換したいと考えるママもいるでしょう。
しかし、授乳中は飲酒してもよいのか、赤ちゃんへの影響がないのかなど、気になりますよね。
この記事では、けいこ豊洲こどもクリニック院長・塚田佳子さん監修のもと、授乳中の飲酒に関する疑問や、知っておきたい注意点などを詳しく解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん

小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
赤ちゃんのために授乳中はお酒を飲まないのが一番安全
飲酒は、妊娠中から授乳期間中のあいだは控えるのが、赤ちゃんにとって一番よい方法です。
アルコールを摂取すると、血液に溶け込んでしまうため、母乳にも移行します。
卒乳してから飲むのがおすすめ
お酒は、卒乳後に飲むのが理想的です。
そうすれば、赤ちゃんへの影響を気にせずにお酒を楽しむことができます。
ただし、出産後の体の回復は人それぞれで、卒乳後であってもママ自身の体調が完全に整っているとは限りません。
気分転換でお酒を楽しみたい場合には、無理のない範囲で少量を摂取するよう心がけましょう。
授乳中のお酒が赤ちゃんに与える影響
母乳を介して赤ちゃんへアルコールの成分が届いてしまうため、飲酒後の授乳には注意が必要です。
赤ちゃんの眠りが浅くなる
アルコールは赤ちゃんの眠りを浅くし、睡眠のリズムを乱すなど、睡眠に影響を与えるおそれがあります。
これによって、夜泣きが増えて生活リズムが不安定になることも考えられます。
発達に影響を及ぼす可能性もある
赤ちゃんは内臓や脳が未成熟なため、アルコールの影響を大人よりも強く受けやすいとされています。
そのため、イライラする、ぐったりするなどの症状が現れるほか、早期の発達に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
母乳がでにくくなる
赤ちゃんがおっぱいを吸うことで分泌される、母乳を作る働きのあるプロラクチンと母乳の放出を促すオキシトシンは、大切なホルモンです。
しかし、アルコールを摂取すると、これらのホルモンの分泌に影響を与え、母乳の分泌量が減ってしまうことがあります。
どうしても飲酒したい場合は?
育児中は慣れないことも多く、息抜きをしたくなるものです。
そのようなときに、お酒を飲んでリフレッシュしたいと思うことがあるかもしれません。
どうしてもお酒を飲みたいときは、なるべく赤ちゃんに影響が出ないように、飲むタイミングや量に気をつける必要があります。
飲酒後2時間以上は授乳を避ける
お酒を飲んだあとは、授乳を控えたり、時間を十分にあけたりするようにしましょう。
乳汁中アルコール濃度は飲酒後2時間が高いとされています。
公益社団法人日本産婦人科医会も、授乳期間中は飲酒を控えることが望ましいとし、飲酒した場合は2時間以上間隔をあけることをすすめています。
お酒の摂取量の目安
一般社団法人母子栄養協会では、体重50kgの女性が飲酒をした場合、およそ2時間後に体内のアルコールが分解できる量はどのくらいなのかを表にまとめています。
これは、WEBサイトで提供している「アルコール計算機」を用いて、アルコール摂取量を算出したものです。
お酒の種類(アルコール度数) | お酒の摂取量 | |
---|---|---|
ビール(5%) | 350ml | |
缶チューハイ(5%) | 350ml | |
発泡酒(3.5%) | 350ml | |
ワイン(14%) | 100ml | |
日本酒(20%) | 80ml |
参考:一般財団法人母子栄養協会
アルコールの分解速度は人によって異なりますが、一般的な目安を知っておくと安心です。
そのときの体調に合わせて、無理はしないようにしましょう。
搾乳をしておく
母乳のみで育てている方は、お酒を飲む前に搾乳しておく方法があります。
また、母乳とミルクを混合で育てている方は、体内のアルコールが分解されるまでのあいだは、ミルクに切り替えるとよいでしょう。
ノンアルコール飲料を飲む
ノンアルコールのビールやチューハイなどは、お酒の気分を味わえる飲み物です。
ノンアルコールと書いてあるから大丈夫だと思ってしまいますが、実際にはそうではない商品もあります。
日本の法律では、アルコール分が1%未満であれば酒類にはあたらず「ノンアルコール」と表示できます。
「0.0%」と書かれていても、微量のアルコールが含まれている可能性があるため、注意が必要です。
完全にアルコールを避けたい場合は、食品表示に「アルコール0.00%」と明記されているかを確認しましょう。
お酒以外に気をつけたいもの
赤ちゃんが授乳期間を健やかに過ごすには、ママが体調をきちんと管理することも大切です。
ここでは、お酒以外でも注意すべき飲み物や食べ物を紹介します。
カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェイン。
カフェインも母乳へ移行してしまうため、授乳中は摂取する量に注意しましょう。
飲みすぎてしまうと、赤ちゃんの発育や健康に影響するおそれがあります。
カフェインを含む飲み物は、コーヒーなら1日1〜2杯程度にし、なるべくノンカフェイン飲料(たんぽぽコーヒーやハーブティなど)を取り入れるのがおすすめです。
生肉、刺身などの生もの
生肉にはリステリア菌、生卵にはサルモネラ菌が付着している可能性があります。
産後の授乳期は、免疫力が低下していることもあるため、十分に加熱してから食べてください。
授乳中に刺身を食べても基本的には問題ありませんが、食中毒を避けるために新鮮なものを選びましょう。
特に、赤身の魚は鮮度が落ちると食中毒のリスクが高まるので、注意が必要です。
授乳中の飲酒はなるべく控えましょう
授乳中は、できる限りお酒を控えることが望ましいです。
お酒の量や時間を気にせずに楽しみたい場合は、卒乳したあとに飲むようにしましょう。
もし飲酒した場合は、次に授乳するまでの間隔をあけ、体内のアルコールが分解されるのを待つ必要があります。そのため、お酒を飲む際は事前に搾乳しておいたり、ミルクに切り替えたりするなどの工夫が大切です。