習い事としても人気で、保育園やこども園、幼稚園でも行われていることが多いリトミック。
リトミックとは何なのか、どんなことをするのか知っていますか?
今回は、知っているようで知らないリトミックの目的や効果を解説します。
この記事のもくじ
リトミックとは?
リトミックは、20世紀初頭にスイス・ジュネーブの作曲家で音楽教育家のエミール・ジャック=ダルクローズ博士(1865-1950)が創案した音楽教育法です。
様々な感覚が著しく発達する幼児期に、音楽と楽しくふれ合い、自由な反応(身体運動や表現)を促し、集中力や表現力、社会性や協調性などを育もうとするものです。
自分自身で何かを感じ取って判断し自分なりの表現を繰り返すため、人間にとって必要不可欠な「考える→判断する→行動する→確認する」という活動パターンのトレーニングにもなります。
まずは、その歴史と目的をご紹介します。
リトミックの歴史
エミール・ジャック=ダルクローズ博士は、1892年にジュネーブ音楽院の教授となります。
そこで学ぶ若者に向け、音楽家にとって重要な「音楽を感じ取る能力、音楽について考え分析する能力」を伸ばすように、「音」「身体」「リズム」の一体化をねらう教育システムを考案したことがリトミックの始まりです。
博士は次第に、リトミックが音楽的能力だけでなく、人間が生きるために必要な能力の育成に役立つこと、また子どもの方が早くその能力を身につけられることに気づきました。
そして幼児教育の分野にも展開し、リトミックは世界中に広まっていったのです。
日本での歴史も古く、明治時代には教育家や音楽家、演劇人、舞踏家などがヨーロッパに渡ってリトミックを学び、各々の分野に取り入れていました。
リトミック教育が本格的に広まったきっかけのひとつは、第二次大戦の終結から間もない時期にアメリカのニューヨークでリトミックを学んだ教師・板野平(いたのやすし)が、国立音楽大学で教鞭をとり、この音楽教育法を推進したことです。
そして現在、音楽教室の他、多くの保育園、こども園、幼稚園の活動の中でリトミックは行われています。また、未就学児の習い事としても人気です。
リトミックの目的
前述のとおり、リトミックは音楽の基礎能力を高めることだけを目的としているのではなく、音感やリズム感など音楽的な能力を伸ばすとともに、想像力や創造性、注意力、集中力、思考力なども引き出そうとするものです。
音楽に合わせて自由な表現を楽しみながら、音楽の基礎能力を高め、身体的、感覚的、知的にも、豊かで可能性あふれる人格を形成するには、子どもの心と身体の発達に合ったカリキュラムでレッスンが行われることが大切です。
リトミックの効果は?楽器演奏・ダンスとの違い
ダンスや器楽演奏では、その理想とする表現がある訳ですが、一方、リトミックでは、先生が即興や即時的に弾いた楽器の音に反応して、ジャンプしたり、スキップしたり、手を打ったり、動きを止めたりと、自分で考え、判断して自由に表現します。
これをリトミックでは「即時反応」といい、最も基本的な活動です。
こうした音楽に対して感じ取ったことをすぐに身体で表現することで、音を「聴きとる」「感じる」という、表現活動の基礎がリトミックのレッスンには多く含まれます。
そのため、ダンスや器楽演奏の前のトレーニングとしても広く行われています。
また、その身体の表現には走る、止まる、しゃがむ、伸びる、スキップする、などの幼児期の基本的な運動が含まれていたり、友達と一緒に活動したりする中で、協調性や社会性もアップ。
レッスンでは音楽に合わせて準備や片付けなどを行うことで、楽しく生活習慣を身に付けることもできます。
リトミックは、のびのびと楽しく身体を動かすことで開放感を味わい、心の安定にも役立ちます。運動が苦手な子どもでも、身体を動かす楽しさを感じることができるでしょう。
リトミックではどんなことをする?
リトミックには、音楽に合わせて身体を動かすことを基本に、打楽器や教具を使った表現など、さまざまな活動があります。
ここでは、リトミック研究センターのカリキュラムによる活動例をご紹介します。
0歳~2歳のリトミック
0歳の赤ちゃんからママやパパと一緒にリトミックに参加できます。
自分で反応して動くことができなくても、ママやパパが一緒に活動してくれることで、安心して音や動きを始めとするさまざまな刺激を感じ取ることができます。
先生、ママやパパの膝の上や抱っこで音楽に合わせて身体を揺らしたり、つかみやすい楽器を持って自由に音を出したりして音楽と動きを楽しみます。
1歳は、立って歩くことができたり、言葉が出てきたりする頃。
音に合わせて歩いたり走ったり、発語してみたり、拍(ビート)を感じとって活動することが多く含まれていきます。
音に合わせて手を打ったり、身体を揺らしたり、ジャンプしたりなどの動きも取り入れていきます。
子どもの思うまま、自由な動きを楽しみます。
2歳になると、音楽(や音)からイメージを膨らます活動も行うようになります。乗り物や動物などになりきり、さまざまな動きで表現をしていきます。
模倣期と呼ばれるこの頃は、このように音や動きや物などの模倣遊びをすることで、大小、長短、強弱などいろいろなニュアンスを楽しく学んでいきます。
ママやパパと一緒に参加することで安心して活動できます。
3歳~6歳のリトミック
だんだん、ママやパパの手を離れて友だちとの活動が増えていきます。
自分と他者を理解して、思いやりの気持ちも芽生えます。音楽的理解も発展して拍から拍子、小節も感覚的に理解していきます。
数の概念が身につくのもこの頃です。
大人数で1つのものを表現する活動などもします。
片付けやあいさつなどに関連した、歌遊びで社会性を養うこともあります。
また、年齢が上がるにつれて音の高・低やリズムの違いなどを理解したり、自分で楽譜を完成させたりするなど、これまで感覚的にとらえていたことの仕組みを理解していくことで、より音楽感覚が高まっていきます。
習い事とリトミック
子どものさまざまな能力を引きだすのに役立つリトミック。
多くの保育園、こども園や幼稚園では、課内・課外活動の他、生活の中に取り入れたり、遊びの一貫として行われていたり、ごく自然な情操教育、人格形成の教育として親しまれています。
習い事では、音楽教室などで行われますが、講師が資格を保有している認定教室では、子どもの発達に合わせた年齢別カリキュラムでレッスンが行われます。
小さな頃はママやパパと、少し大きくなったら友達と一緒に、音楽や音にふれ合うことができます。
少人数でレッスン時間も長く、専門的で音楽的な要素がより高めなのが認定教室の特徴です。
親子のふれ合いも多く、0歳の赤ちゃんから参加できるため、“初めての習い事”としても人気が高まっています。
音楽を自由な表現で楽しんで
リトミックとは、子どもの発達に合った自由な表現を楽しむ音楽教育法です。
効果的なレッスンを受けるには、資格を保有する先生や教室を選ぶことが大切です。
「わが子には音楽を好きになってほしい」と願うパパやママはもちろん、子どもの情操教育に興味のある方にもおすすめできる習い事のひとつです。
▼習い事についての記事はこちら!
監修:NPO法人リトミック研究センター
岩崎光弘(1944~2019、初代会長)が、後に国立音楽大学名誉教授となる板野平教授(1928~2009)を顧問に迎え、日本ビクター支援の下1988年に設立。
以降35年以上に渡り、ヨーロッパの教育法であるリトミックを日本の文化や教育制度に適した指導法で実践し、研究を行っている。
現会長 神原雅之(京都女子大学教授)、会員数約10,000人。
文:nicoai