妊婦さんにとって、食べ物の選び方はとても大切です。
特に、はちみつに関しては「食べても大丈夫?」と心配している妊婦さんも多いでしょう。
この記事では、八丁堀さとうクリニック副院長の佐藤杏月さん監修のもと、妊婦さんは安心してはちみつを摂取できるのか、はちみつの効果などをわかりやすく説明します。また、赤ちゃんへの影響についてもお伝えします。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
八丁堀さとうクリニック副院長・産婦人科医:佐藤杏月さん
日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。
3人の子どもの子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の夫とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
医療法人社団双葵会八丁堀さとうクリニック副院長、医学博士、日本産婦人科学会専門医。
妊婦がはちみつを食べても問題ありません!
妊娠中は自分の身体だけでなく、お腹の赤ちゃんの健康も守りたいという気持ちから、食べ物の安全性について考える妊婦さんもいるでしょう。妊婦さんが、はちみつを食べても問題ないといえる理由を紹介します。
胎児に影響はない
大人である妊婦さんがはちみつを食べても、胎児に悪い影響を与えることはありません。
はちみつに含まれるボツリヌス菌は、食中毒を起こす原因のひとつですが、腸内細菌の働きによって大人の腸内では繁殖できないからです。
ただし、不安がある場合には、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。
摂取量には気を付けて
はちみつは妊婦さんにもおすすめです。
ただし、糖分も多く含まれているため、摂りすぎると、体重増加や血糖値の上昇につながることがあります。
特に、妊娠中は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクもあるため摂取量には気を付けましょう。
妊婦に嬉しいはちみつの効果
妊娠中は体調の変化や疲れが出やすいため、栄養面に気を付けることが大切です。ここからは、はちみつが妊婦さんにどのような効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
①疲労回復に役立つ
はちみつにはブドウ糖や果糖、アミノ酸やビタミンなどの栄養素が含まれています。
ブドウ糖や果糖は人が活動するうえで大切なエネルギー源であり、これにより、妊娠中の疲労感を和らげる助けになります。妊娠中は消費カロリーが普段よりも多くなることがあるため、適度にエネルギーを補給することが大切です。また、アミノ酸やビタミンなどは疲労回復に効果があるといわれており、妊婦さんの助けになるかもしれません。
はちみつをお湯に溶かして飲んだり、ヨーグルトに加えたりすることで、手軽にエネルギーを補給できます。
②腸内の善玉菌を増やす
妊娠中はホルモンバランスの変化や腸の動きの鈍さなどから、便秘になりがちです。便秘が続くことで体調にも影響を及ぼすことがあります。
はちみつに含まれるオリゴ糖は腸内の善玉菌のエサとなり、腸内細菌を増殖させることで腸内環境を整えるため、便秘の改善に役立ちます。はちみつと合わせて、水分もしっかり取ることも大切です。
③抗菌力がある
はちみつには、殺菌力や抗炎症作用があるため、風邪の症状軽減につながるといわれています。飲み薬を手軽には飲めない妊娠中には、はちみつが役立つかもしれません。咳などの出始めや喉に違和感があるとき、はちみつを舐めたり、白湯に入れて飲んだりするのもよいでしょう。
風邪の症状が気になるときは、無理せず身体を温め、ゆっくり休むことを心がけましょう。
④砂糖より低カロリー
はちみつは砂糖に比べてカロリーが低く、甘さが強いため少量でも満足感が得やすいでしょう。
甘いものが食べたくなったときに、砂糖の代わりにはちみつを取り入れることで、カロリー摂取を抑えられます。
妊娠中は体重管理も大切ですが、甘いものを無理して我慢するとストレスが溜まってしまうこともあります。はちみつを砂糖の代替に使うことで、甘さを楽しみながらカロリーも抑えられるため、うまく活用してみてください。
1歳未満の赤ちゃんに与えるのはNG!
はちみつは妊婦さんにとって安全ですが、1歳未満の赤ちゃんにはリスクがあるため与えてはいけません。ここでは、1歳未満の赤ちゃんは、なぜはちみつを避けるべきかお伝えします。
乳児ボツリヌス症を発症する恐れがある
1歳未満の赤ちゃんには、はちみつを与えてはいけません。
赤ちゃんの腸内環境は未熟であり、ボツリヌス菌が繁殖しやすく「乳児ボツリヌス症」を引き起こす恐れがあるためです。
この病気は全身の筋力低下や脱力状態などの症状があらわれ、稀に命に関わることもあるため注意が必要です。
はちみつ入りのお菓子や飲み物もNG
はちみつが含まれるお菓子や飲み物も、1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。
ボツリヌス菌は熱に強く加熱処理されていても死滅しないことがあるため、注意が必要です。市販のお菓子や飲み物に含まれるはちみつも同様ですので、成分表示をしっかり確認することが大切です。
ママやパパだけではなく、赤ちゃんのお世話をするおばあちゃんやおじいちゃんにもはちみつが禁止であることを伝えておきましょう。
1歳を過ぎてから少量ずつ与えよう
赤ちゃんが1歳を過ぎたら、はちみつを少しずつ取り入れてみましょう。
1歳を過ぎると腸内環境が整い、ボツリヌス菌のリスクが大幅に減少します。また、はちみつを初めて与えるときは、アレルギーの可能性も考え少量から始めて、赤ちゃんの反応を見ながら進めるとよいでしょう。
授乳中のはちみつも問題はありません
妊娠中だけでなく授乳中にも、自分の食べるものが赤ちゃんにどのような影響を与えるのか気になるものです。特に、はちみつについてはボツリヌス菌の影響を心配するママも多いかと思います。次は、授乳中のはちみつの安全性について説明します。
ママの腸内ではボツリヌス菌は繁殖しない
授乳中のママがはちみつを食べても、母乳を通じて赤ちゃんに悪影響が及ぶことはありません。
大人の腸内環境ではボツリヌス菌が繁殖できないため、安心してはちみつを取り入れてください。
授乳中は栄養をしっかり摂ることが大切です。疲れたときや甘いものが欲しいときに、はちみつを上手に活用しましょう。
摂取量に気を付けて、上手に摂取していきましょう!
はちみつは腸内環境改善や疲労回復に役立つなど、妊婦さんにもよい効果がたくさんあります。
ただし、はちみつを過度に摂りすぎると、体重増加や血糖値の上昇につながることがあるため、適切な量を守ることが大切です。
何か心配なことがあれば遠慮せず、かかりつけの医師に相談しながら安心して妊婦生活を楽しんでください。
文:西川正太