
つわりは妊娠初期に起こる症状です。妊娠中はホルモンバランスが乱れ、体にさまざまな変化が現れます。出産へ向けて楽しみな反面、症状がおさまらないといつまで続くのかと不安を感じてしまいますよね。この記事では、八丁堀さとうクリニック副院長の佐藤杏月さん監修のもと、つわりはいつごろから始まりいつごろがピークなのか、種類や対策方法などを紹介します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
八丁堀さとうクリニック副院長・産婦人科医:佐藤杏月さん

日本医科大学卒。日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。
3人の子どもの子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の夫とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
医療法人社団双葵会八丁堀さとうクリニック副院長、医学博士、日本産婦人科学会専門医。
つわりとは?
つわりは妊娠5週目ごろに始まり、胃のむかつきや吐き気などが主な症状です。
多くの妊婦さんがつわりを経験するといわれ、軽かったり重かったりと症状の現れかたには個人差があります。
「妊娠悪阻(にんしんおそ)」といって、食事や水分がほとんど取れない状態に悪化することも。
脱水症状や体重の減少などは放っておくと重篤な状態になることがあるため、自己判断せず医師に相談するようにしましょう。
つわりのピークは妊娠8~10週ごろ
妊娠初期のつわりは、安定期に入るころには症状が落ち着いてくることが多いです。
ここでは、つわりの原因やピークについて紹介します。
つわりの原因
つわりの明確な原因はわかっていませんが、妊娠によって自律神経のバランスが崩れることや、妊娠初期に血中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とエストロゲンが急速に増大することなどが関係していると考えられています。
hCGとは、子宮に受精卵が着床したら分泌される、妊娠の成立や維持に大切なホルモンです。
妊娠した後の体の中の急激な変化に適応できていないため、ともいわれています。
いつからいつまで?
つわりは妊娠5〜6週から症状が始まり、安定期に入る妊娠12〜16週までには自然に消失します。
一般的につわりのピークは妊娠8〜10週くらいですが、個人差があります。
ピークを過ぎるころには症状が軽くなってくることが多いです。
妊娠16週以降もつわりの症状がおさまらない場合は、ほかの疾患が潜んでいる可能性もあるので注意が必要です。
後期つわりもある
妊娠後期にも、つわりの症状が出ることがあります。
後期つわりといって、妊娠初期と同じような胃もたれや胸やけ、吐き気などを感じる症状です。
おなかの赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮が胃を圧迫することや、妊娠週数が進むにつれて黄体ホルモンが分泌され、胃や腸の働きが弱くなってしまうことが主な原因と考えられています。
臨月に入り子宮口へ赤ちゃんが下がってくることで、胃の圧迫が軽減され症状が落ち着く場合もあります。
つわりの種類と症状
一般的なつわりは「吐きづわり」「食べづわり」「においづわり」「眠りづわり」「よだれづわり」の5種類に分類できます。
吐きづわり
胃がムカムカして吐き気があることや嘔吐する症状が、吐きづわりです。
普段のように食べ物を摂取できなくなるため、妊娠前より体重が減ってしまうことも。
さっぱりしたものや酸っぱいものは口にできたり、ある特定の食べ物は吐かずに食べられたりします。
食べづわり
胃が空っぽになり空腹を感じると、気持ち悪くなる状態のことです。
何か食べて胃を満たしておくとおさまりますが、食べ過ぎると胃が消化できず、かえって気持ち悪くなる恐れがあります。
においづわり
妊娠する前は感じなかったにおいに敏感になったり、好きだったにおいを不快に感じたりします。
妊娠により自律神経が乱れることで、においに敏感になるようです。
不快に感じるにおいとして、ご飯を炊くときのにおいや、調理した食べ物のにおいなどが挙げられます。
香水や衣服の柔軟剤など、強いにおいが苦手になる妊婦さんもいます。
眠りづわり
夜間に十分な睡眠をとっているのにもかかわらず、日中も眠気に襲われて体がだるくなる状態です。
眠い状態が続いていると、日中に居眠りやぼんやりするなどして集中力の低下を引き起こすことがあります。
眠りづわりは、眠さに重ねて頭痛や気分の落ち込みがある場合もあります。
よだれづわり
妊娠初期に女性ホルモンの分泌量が増加します。
それにともない、唾液の分泌量が増えたり、飲み込むと吐き気を感じたりする状態がよだれづわりです。
唾液が飲み込めないことで口の中に唾液が溜まってしまい、ねばつきや不快感があります。
つわりの種類ごとの対策
つわりが起こる原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、症状を和らげることはできます。
【吐きづわり】食事の間隔を短く
吐きづわりの症状が重い場合は、無理やり食べ物を口にしなくても大丈夫です。
しかし、胃が空っぽのままだとかえって吐き気が増すことがあるため、空腹の時間を作らないようにします。
症状が少し落ち着いたあと、消化のよいものを少しずつ食べるようにしてください。
吐き気の症状が重いときは無理に食べようとせず、脱水症状にならないように必要に応じて水分補給をしましょう。
まったく食べられず体重が減るとおなかの赤ちゃんに影響がないか心配になりますが、妊娠経過に問題がなければ心配する必要はありません。
【食べづわり】栄養素をバランスよく摂取
食べづわりは食べ過ぎてしまうことで症状が悪化するため、注意が必要です。
普段よりも食事回数を増やし、一度に食べる量を少なくすることで、食べ過ぎを防ぐようにしましょう。
妊娠中は食の好みが変化するため、受けつけなくなる食べ物も出てくるかもしれませんが、なるべく栄養をバランスよく摂取するようにしてください。
特に鉄分や葉酸、カルシウムといった栄養素は、妊娠中に積極的にとりましょう。
【においづわり】家庭内で工夫してにおいを軽減
家庭内のさまざまなにおいが苦痛になる場合は、においを軽減する対策が必要です。
香りの強い洗剤やシャンプー、リンスなどは使用しない、ご飯を炊く際にはまとめて炊いて小分けしておき、冷凍するなどの工夫をしましょう。
食べ物は温かいものよりも冷ました方がにおいの軽減になります。
【眠りづわり】無理をしないこと
眠くなったら少しの時間でもよいので、ソファーやベッドなどで睡眠や休息をとるように心がけてください。
寝ていないとつらくなるほどの状態なら、休んで無理をしないことが大切です。
職場にも眠気はつわりの症状のひとつであることを伝えて、理解を得ておくとよいでしょう。
【よだれづわり】こまめに水分をとる
よだれづわりは口をゆすいだり、歯を磨いたりすると症状が和らぐことがあります。
唾液が飲み込めないときは、無理をして飲み込もうとせずに、吐き出すかティッシュで拭き取ってください。
口の中の乾燥やねばつきを防ぐために、こまめに水分補給をしましょう。
自分のペースで無理せず乗り越えましょう!
妊娠初期は、つわりを経験する人が多い時期です。つらい状態が続くと、日常生活に支障が出て身体的だけでなく精神的にもまいってしまいますよね。しかし、つわりがピークを過ぎると、症状も次第におさまってきます。つらいときは我慢をせず、周りに頼ることも大切です。ここで紹介した対策を参考につわりを軽減し、つらい時期を乗り切りましょう。
文:misono