赤ちゃんは母乳やミルクを飲んだあとに吐き出してしまうことがあります。
回数が多いと何かの病気ではないかと心配になるママもいるでしょう。
この記事では、けいこ豊洲こどもクリニック院長・塚田佳子さん監修のもと、赤ちゃんの吐き戻しはいつまで続くのか、具体的な対策などについて詳しく紹介します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
けいこ豊洲こどもクリニック院長:塚田佳子さん
小児科専門医、子どもの心相談医。けいこ豊洲こどもクリニック院長。
獨協医科大学医学部卒業。同大附属病院勤務等を経て2020年から現職。
2023年にはパークタワー勝どき小児科を開院。
2人の小学生男児の母として、日々、ママ目線で診察中。
どうして赤ちゃんはよく吐くの?
赤ちゃんが授乳後、母乳やミルクを吐き出してしまうことを「吐き戻し」といいます。
これには、いくつかの要因が考えられます。
消化器が未発達で逆流しやすい
赤ちゃんは「下部食道括約筋」という胃の入り口にある筋肉がまだ発達していません。
そのため、胃の入り口がしっかりと閉じず、飲んだものが食道へと逆戻りしてしまいます。
さらに、赤ちゃんの胃はまだ小さく縦長の形状をしていて、飲んだものが胃に溜まりにくいため、胃からあふれやすくなっています。
授乳中は、頭が胃よりも高い位置になるよう、少しだけ上体を起こした体勢で飲ませてあげましょう。
空気を飲み込みやすい
母乳やミルクを飲む際、同時に空気も飲み込んでしまうことがあります。
飲み込んだ空気がゲップとしてうまく抜けずに胃に残ると、吐き戻しの原因となりやすいです。
空気を必要以上に飲み込まないようにするためには、授乳時の飲み方が大切です。
母乳の場合は乳首と赤ちゃんの口の相性、ミルクの場合は哺乳瓶の乳首との相性などもありますが、吸いつき方が安定すれば空気を飲み込みにくくなります。
哺乳瓶を使用している場合には乳首のサイズ調整が重要になるので、哺乳瓶の乳首と赤ちゃんの口のフィット感をよく確認しましょう。
母乳やミルクの量を調節できない
赤ちゃんは満腹中枢の機能が未熟なため、ミルクの量には配慮が必要です。
満腹中枢とは、脳の視床下部にある中枢神経で、「おなかがいっぱいになった」とサインを出して食欲をストップさせる働きを担っています。
特に新生児期は、口に入ったものに反射的に吸いついて飲む「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」により、飲みたいという意思とは無関係に母乳やミルクを飲んでいます。
そのため、与えれば与えるだけ飲んでしまい、これが吐き戻しの原因となることがあります。
赤ちゃんの吐き戻しはいつまで続く?
吐き戻しは一過性のものであり、赤ちゃんの成長とともに自然と落ち着いていきます。
4~6か月頃から徐々に減り始めることが多い
吐き戻しは、おおよそ生後4〜6か月頃には落ち着いてくることが多いでしょう。
脳の満腹中枢が発達することで、反射的に飲んでしまうことが減り、飲み過ぎを防げるようになることも関係しています。
赤ちゃんの成長のスピードには個人差があるため、1歳近くまで続くこともありますが、体重が順調に増えていれば問題ありません。
吐き戻しの「正常」と「要注意」の見分け方
赤ちゃんの吐き戻しのほとんどは心配いりませんが、ごくまれに病気が隠れている可能性があるため、注意が必要です。
普段から赤ちゃんの全身状態を観察し、いつもと違う様子がないかを確認するなど、症状を見逃さないようにしましょう。
正常な吐き戻し
勢いよく吐くのではなく、口の端からタラタラとこぼれる、ゲップと一緒に少量を吐き出す程度であれば問題ありません。
嘔吐物や色などが普段と大きく変わっていないかを確認しましょう。
最も重要なのは赤ちゃんの様子です。吐いた後もケロッとしていて、顔色もよく元気があるようなら心配いらないケースがほとんどです。
注意が必要な吐き戻し
吐き方や嘔吐物の色、赤ちゃんの様子などで受診が必要かどうかを判断します。
特に、生後2週間頃から毎回、噴水状に勢いよく嘔吐する、ぐったりして元気がない、機嫌が悪く泣きやまないといったときは、一度小児科を受診しましょう。
嘔吐を頻繁に繰り返すことで脱水が進むことがあります。半日以上おしっこが出ていない、極端に少ない場合は脱水症状が疑われるため、注意が必要です。
黄色や緑色の嘔吐物とともに激しい腹痛が一定の間隔を空けて繰り返し起きる場合は、腸閉塞や腸回転異常症といった病気の可能性があるため、迷わずすぐに小児科を受診してください。
吐き戻し後に赤ちゃんの機嫌が悪くなくても、体重が増えない、または減っているケースでは小児科医や助産師などの専門家に相談しましょう。
赤ちゃんの吐き戻し5つの対策
ここでは、赤ちゃんの吐き戻しを軽減するための具体的な対策を紹介します。
赤ちゃんに合った方法を見つけていきましょう。
①こまめにゲップをさせる
母乳やミルクを勢いよく飲む赤ちゃんは、空気も多く飲み込んでいる可能性があります。
授乳の途中でこまめにゲップを促してあげることで、赤ちゃんが一緒に飲み込んでしまった空気を効率よく排出できるため、吐き戻しを減らすのにおすすめです。
ゲップを促す際は、赤ちゃんを肩に抱える姿勢や、膝の上に座らせた状態で背中をまっすぐさせる姿勢、あるいは大人の脚の上にうつぶせにするなどの姿勢にします。
その姿勢で赤ちゃんの背中を軽くトントンとたたいたり、さすったりしてあげましょう。
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②授乳量を調整する
授乳のたびに吐き戻す赤ちゃんは、一度に飲む母乳やミルクの量が多すぎる可能性があります。
1回の授乳量を少し減らして、授乳の回数を増やしてみましょう。
そうすることで、赤ちゃんの消化器にかかる負担が減り、吐き戻しが改善されやすくなります。
③すぐに寝かせず縦抱きをする
授乳後すぐに赤ちゃんを横に寝かせないようにしましょう。
縦抱きで20〜30分程度、赤ちゃんの頭の位置を高く保つようにします。
これにより、ゲップがスムーズに出やすくなり、胃に入った母乳やミルクが食道へ逆流するのを防ぎます。
④新しい哺乳瓶を試してみる
哺乳瓶で授乳している場合、乳首のタイプを変えてみるのもおすすめです。
乳首から出るミルクの量が多すぎると、赤ちゃんが急いで飲み込み、空気を一緒に吸い込んでしまうためです。
ミルクが出る穴が小さめで出る量が少ない乳首を選ぶなど、赤ちゃんの飲むペースに合ったサイズのものを選んでみましょう。
⑤ミルクの種類を変えてみる
赤ちゃんによっては、飲んでいるミルクの味が好みではない、あるいは何らかの理由で体質に合っていないことがあります。
吐き戻しが続いている場合は、小児科医に相談して、ミルクの種類やメーカーなどを変えてみることも考えてみましょう。
赤ちゃんの様子をしっかり観察しましょう
赤ちゃんが母乳やミルクを吐き戻すのは、一般的によくみられることです。
ほとんどの場合は成長するとともに自然に治まってくるため、あまり心配しなくても大丈夫でしょう。
噴水のような激しい嘔吐を繰り返す、顔色が悪く元気がないといった症状がある場合は、自己判断せず小児科を受診してください。
赤ちゃんのちょっとした変化に気付けるように、日頃から顔色や機嫌などを注意深く観察しておくことが大切です。
文:misono
