「赤ちゃんがおっぱいをうまくくわえられない」「授乳のたびに痛みを感じる」と不安になる方は少なくありません。
そのような悩みを解決して、母乳育児を順調に進めるために大切なのが「ラッチオン」です。
今回は、ラッチオンとはどういったものか、その基本とうまくいかないときの対処法をわかりやすく解説します。
この記事のもくじ
この記事を監修いただいたのは…
助産師:古谷 真紀(ふるや まき)さん
自治体や企業等と連携した産前産後ケア事業担当を歴任後、妊娠中から産後のママパパ&赤ちゃんのための講座運営や相談事業に従事している。
ラッチオンとは?
ラッチオンとは、赤ちゃんの口が乳頭(乳首)だけでなく、乳輪の大部分を覆う状態で母乳を飲むことです。
赤ちゃんが乳房に深く吸いつくことで、しっかりと母乳を飲み取れるだけでなく、ママの乳頭への負担も減らせます。
「ラッチオン(latch on)」は「吸着」や「乳房を含ませること」と訳されることもあります。
しかし、実際には赤ちゃんが乳首をくわえる動作だけを言い表しているわけではありません。赤ちゃんがおっぱいを深くくわえて、無理なく母乳を飲めている状態までを含めた言葉です。
この意味を適切に表現できる日本語がないことから、助産師などの専門職による授乳支援の現場では「ラッチオン」という言葉がそのまま使われています。
ラッチオンが大切な理由
正しいラッチオンは、赤ちゃんにとってもママにとっても、心地よい授乳につながります。
赤ちゃんが効率よく母乳を飲むことができる
赤ちゃんが深くくわえることで、舌が波のように動き、乳輪の内側にある母乳の通り道(乳管)をやさしく圧迫します。
この動きと口のなかで生まれる吸う力(陰圧)が組み合わさることで、効率よく母乳を飲むことができます。
おっぱいの痛みを軽減できる
赤ちゃんが浅くくわえた状態で授乳を続けると、同じ部分に負担が集中し、乳頭の痛みや傷、出血などのトラブルにつながることがあります。
赤ちゃんの口が乳輪の大部分を覆うようにくわえられると、乳頭への負担が減り、痛みを感じにくくなります。
また、乳房にたまった母乳がしっかりと出て、おっぱいの張りが軽くなり、乳腺炎の予防にもつながります。
母乳の分泌を促しやすい
赤ちゃんがしっかり吸うことで乳房が十分に刺激され、母乳を作るホルモン(プロラクチン)や母乳の排出を促すホルモン(オキシトシン)が働きやすくなります。
正しいラッチオンができていることと、赤ちゃんの欲しがるタイミングに合わせて授乳することは、母乳が十分に作られる状態を保つためにも大切です。
ラッチオンを成功させるコツ
赤ちゃんが無理なくラッチオンできるように、次のような点を意識しましょう。
1.授乳しやすい姿勢を整える
授乳を始める前に、親子で授乳しやすい姿勢を整えます。まずは、赤ちゃんの頭、首、背中が一直線になるように抱っこしましょう。
赤ちゃんとママのお腹が向き合うように支えると、乳房に近づけやすくなります。
ママも楽な姿勢で授乳できるように、クッションや枕を使うとよいです。前かがみにならずに赤ちゃんを乳房に近づけるためには、足元に小さな踏み台を置くのもおすすめです。
2. 赤ちゃんが大きく口を開けたタイミングでくわえさせる
赤ちゃんの鼻が乳頭の正面にくるように抱き、乳頭で上下の口唇をやさしくくすぐって、口が開くタイミングを待ちます。
赤ちゃんがあくびをするように大きく口を開けて、舌を前に出したら、赤ちゃんの身体を乳房へ近づけてくわえさせます。
このとき、乳首を赤ちゃんの口へ押し込むのではなく、赤ちゃんのあごから乳房に近づけることを意識すると、乳輪の部分まで口のなかに含むことができます。
乳房を支える場合は、指が赤ちゃんの口元に当たらないよう注意しましょう。
ママの親指を赤ちゃんの鼻と同じ方向に持っていくと、乳房の形を赤ちゃんの口の形に合わせることができ、赤ちゃんが吸いやすくなります。
3.ラッチオンを確認し、必要に応じてやり直す
上手に吸いついている場合、赤ちゃんの飲み方は、最初は短く速く吸うリズムから始まり、徐々にゆっくりとした深いリズムに変わります。
あごが大きく動いている、母乳を飲み込む音が聞こえるといった様子があれば、しっかりと飲めています。
もし違和感や痛みがあれば、いったん赤ちゃんを乳房から離して、もう一度やり直してみましょう。
授乳時間よりも「しっかり飲めているか」が大切
乳房に深く吸いつくことができていれば、短時間の授乳でも必要な量の母乳を飲めることがあります。
一方で、いわゆる浅飲み(浅吸い)と呼ばれる、乳頭だけをくわえている状態では、長時間授乳しても十分に母乳を飲み取れないことがあります。
吸い続けた時間だけに注目するのではなく、赤ちゃんの様子や吸い方を確認することが大切です。
ラッチオンができているときのサイン
しっかりとラッチオンができているときは、赤ちゃんとママにいくつかのサインが見られます。
ママ側のサイン
- 授乳中に乳房や乳頭に痛みがない
- 吸い始めに強い痛みがない、あってもわずかな違和感程度である
- 授乳後におっぱいの張りが軽くなる
赤ちゃん側のサイン
- 口が大きく開いている
- あごが乳房に触れている
- 下唇が外側にめくれて、内側に巻き込まれていない
- 「吸う→少し休む→また吸う」というゆっくりとしたリズムで飲んでいる
- 母乳を飲み込む音が聞こえる
- 吸っているときに耳がわずかに動く
ラッチオンができていないときに見られやすいサイン
次のような様子が見られる場合は、赤ちゃんが浅くくわえている可能性があります。
赤ちゃん側のサイン
- 口が大きく開いていない
- 口唇が内側に巻き込まれている
- 舌打ちするような音が聞こえる
- 吸うたびにほっぺがくぼむ
- 飲み込む音がほとんど聞こえない
- 落ち着きのない速いリズムで吸っている
授乳姿勢に見られるサイン
- ママの肩に力が入っていて前かがみになっている
- 赤ちゃんの身体がママから離れている
- 赤ちゃんが首をねじって乳房を吸っている
- 赤ちゃんのあごが乳房に触れていない
正しいラッチオンが難しいときに考えられる原因
赤ちゃんが乳房に深く吸いつけない場合は、授乳のやり方だけが原因とは限りません。赤ちゃんとママ、それぞれの要因が重なっていることもあります。
赤ちゃんは生まれたときから母乳を飲む力を持っていますが、口の大きさや舌の動き、吸う力は成長とともに発達していきます。
そのため、眠気が強いときや吸う力がまだ十分でない時期は、うまくラッチオンできないことがあります。
また、ママのおっぱいの張り具合や、乳頭の大きさや形と赤ちゃんの口の大きさとのバランスによっても、くわえやすさは変わります。おっぱいが張っているときは、授乳前に少し搾乳して乳輪をやわらかくすると、赤ちゃんが深くくわえやすくなることがあります。
赤ちゃんが乳頭をくわえにくい場合には、乳頭保護器(ニップルシールド)を一時的なサポートとして使用する方法もあります。
ただし、長期間使用すると母乳の飲み取り方に影響することがあるため、使用する際は助産師など授乳に詳しい専門家に相談しながら進めることが必要です。
ラッチオンがうまくいかない状態が続く場合は、助産師や小児科医など授乳に詳しい専門家へ相談しましょう。
ラッチオンの際に痛みを感じるときは?
ママが痛みを感じるときは、無理に授乳を続ける必要はありません。
赤ちゃんの口角(口の端)からやさしく指を入れて吸う力を抜き、いったん乳房から離して、もう一度ラッチオンをやり直してみましょう。
乳頭に傷ができたときは?
乳首に亀裂や血豆、またはかさぶたがあるときは、赤ちゃんの口角が傷の方向に向くように角度を調整してくわえさせます。
乳首だけでなく、乳輪までしっかりと深くくわえさせることを意識しましょう。
ラッチオンを意識して快適な授乳時間を
母乳育児を無理なく続けるためには、授乳時間の長さよりも正しいラッチオンを意識することが大切です。
親子にとって心地よい授乳になるよう、無理のないペースでラッチオンを身につけていきましょう。
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【参考文献】
・母乳育児支援スタンダード第3版 NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会 医学書院 2025
・Ensuring Proper Latch On While Breastfeeding American Academy of Pediatrics(2026年7月閲覧)
イラスト:Ryoko Ishiyama

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