「宿題やったの?」「早くやりなさい」と何度言っても取り掛からない。
やっと机に向かっても集中できずに進んでいないようでイライラ……。そんなママやパパの「困った」に役立つと話題なのが「しゅくだいやる気ペン」です。
子どもが自分から学びたくなる、驚きの仕組みを開発担当者に伺いました。
この記事のもくじ
キッズアライズ編集部が気になるキッズ関連サービスをご紹介。
今回は、「しゅくだいやる気ペン」です。子どもが宿題や勉強に「やる気」を出すカギは、親子のコミュニケーションにありました。
「しゅくだいやる気ペン」とは
市販の鉛筆に、センサーつきのアタッチメントを装着して専用のスマホアプリと連動させることで、子どもの勉強の取り組みを分析し「見える化」。
ゲーム要素を盛り込んだ様々な仕掛けにより、勉強への意欲を高めます。
「しゅくだいやる気ペン」についてお聞きしました!
お聞きした方:コクヨ株式会社 中井信彦さん
子どもの頑張りを見える化し、親が褒めるきっかけをつくる
-「しゅくだいやる気ペン」は、コクヨ初のIoT文具ですね。なぜ、子どもの学習にスポットを当てたのでしょうか
中井さん:コクヨは長年「書く」ことに向き合ってきた会社です。書くというのは非常にクリエイティブな作業ですし、その入口に立つ子どもをIoTの技術でサポートできないかと考えました。幼少期に書くこと学ぶことを好きになれたら、それは一生の宝になります。
-どんな仕組みか教えてください
中井さん:「しゅくだいやる気ペン」は、鉛筆を動かした時間を分析し、子どもの頑張りを「見える化」します。子どもが書きたくなる、親が褒めたくなる様々な仕掛けによって、「書く⇔褒める」のサイクルをつくり、やる気を育みます。子どもが一人でやる気になるのではなく、親子のコミュニケーションを重視しているのが特徴です。
「書く⇔褒める」のサイクルで、やる気を引き出す
-子どもが書きたくなる仕掛けとは、どのようなものでしょうか
中井さん:ペンを持って「やる気パワー」が溜まると、LEDの色が変わっていきます。溜めたパワーを親御さんのスマホに向けて注ぐと、パワーに応じてリンゴの実がなる。その実の数だけスゴロクを進められ、スタートからゴールへ向かうなかで色々なアイテムをゲットできるんです。子どもの大好きな恐竜や、海の生き物などをテーマにしたスゴロクが20種類、アイテムは200種類以上もあります。
ペンの色が変わるのを見たくて宿題を進める子、パワーをスマホに注ぐのが楽しい子、アイテムをゲットしたくて頑張る子と、何が琴線にふれるかは十人十色です。
-親が褒めたくなる仕掛けも教えてください
中井さん:ペンを使った日はアプリ上のカレンダーに記録が残り、花丸をつけてあげられます。また「やる気タイム」をペンが判定してグラフで示すため、子どもの頑張りが一目でわかります。さらに、スゴロクのゴールの「ゴホウビ」は、親子で話し合って決める設定になっているんです。
-花丸をつけたり、ご褒美を決めたりするのが親というのがいいですね
中井さん:そうなんです。開発当初は、親の手間を省くことも考えましたが、試作機をモニターさんに使ってもらうなかで、「書く⇔褒める」シーンが親も子も一番「幸せ」を感じる瞬間だと気づき、あえて自動化していません。
また「ゴホウビ」に私たちがどれだけ魅力的なアイテムを用意しても、親子で約束したご褒美にはかないませんから。
ユーザーから届いた、「宿題だけじゃ足りない!」の声
-「しゅくだいやる気ペン」というネーミングもキャッチーですね
中井さん:試作機のテスト時、子どもたちに「宿題をやる気になるペンだよ」と伝えたらすごく反応がよかったんです。
家庭学習の代表例として「しゅくだい」としていますが、考えてみると宿題は学校の先生との「約束」でもあります。「宿題やりたくないなぁ」と思うことに子どもも罪悪感があるのかもしれません。
-購入者からは、どんな感想が届いていますか
中井さん:「自分から机に向かうようになった」「褒める機会が増えた」という声が多いです。「宿題だけでは足りない!」と、前に買ってそのままになっていた「学習ドリル」を引っ張りだして勉強を始めたという子もいました(笑)。
宿題の先にある、好きなことに没頭する大人の姿
-商品を使うことで、子どもは何を得られますか
中井さん:子どもたちは初め、アイテムやご褒美をゲットしたいという外発的動機づけからやる気を出します。そこから次第に「学ぶこと自体がおもしろい」という内発的動機づけが引き出されると感じています。
例えば、宿題の日記を1行しか書かなかった子が、書くことに慣れるうちに2行3行と増え、ついには「日記に書きたいから、週末はおもしろいところに連れていって」と親御さんにお願いしたケースもあります。“書く”という行為は人間のポテンシャルを引き出すと再確認させられました。
-宿題が「やらされるもの」ではなく「やりたいもの」になるんですね
中井さん:そうですね。海洋研究開発機構(JAMSTEC)や国立極地研究所(南極地域観測隊)とコラボレーションしたスゴロクも用意していますが、それは学術的な知識だけでなく、未知の世界に向き合うワクワク感や、広い世界に飛び出して自ら学ぶ楽しさを感じてもらいたいからです。
そして、それを仕事にしている大人がいると知ってほしい。それが宿題と地続きにある未来の姿だと感じてくれるとうれしいですね。
「書く」という行為から、子どもの未来は拓かれる
-中井さんのお子さんも、書くことが苦手だったと伺いました
中井さん:めちゃくちゃ苦手でした。開発当時、息子が小学1年生、娘は3年生。特に息子は、ひらがな以前に点から点に線を引くのも上手くできずに自信をなくしていて、学びの入口にも立てないのではと心配していました。
「しゅくだいやる気ペン」は解答の正誤、字の正確さの判定や評価をしません。書くだけでパワーが溜まり褒められる仕様にしたのは、その影響があるかもしれません。2人にはペンを試作機から使ってもらいました。
今、息子は5年生。字は上手いとは言えませんが、前向きに学習に取り組む姿勢があり、親として誇りに思います。上の娘は書くことが好きになり、休日には宿題のレポートを熱心に作成しています。
-それはうれしいですね。開発にあたり、何か印象に残っているエピソードはありますか
中井さん:発売後しばらくして届いたユーザーからの手紙ですね。小さな子の字で「こくよさん、ありがとう」と書いてあり、親御さんから「これは息子が初めて書いた手紙です」と喜びの声が添えられていて……。その日の夜は涙が止まりませんでした。この商品を世に出せてよかったと感じた、忘れられない瞬間です。
-子どもの宿題に奮闘する、ママやパパにメッセージをお願いします
中井さん:子どもの進歩は、ゆっくりだったり、突然だったり。だから、焦らずに、根気よく。
びくともしなかった石が、ほんの少しだけ動くときが必ず来ます。子どもと一緒に歩む「学び」のときが、最高に楽しいものになることを願っています。
キッズアライズのまとめ
宿題をやってほしいのは、子どものことを思うからこそ。
すぐに目に見える成果を求めてしまいがちですが、親子で学習に取り組む日々の積み重ねが、必ず子どもの未来につながると改めて感じました。